これからの獣医療はどうなっていくのか。
そして、獣医師は今後どのように学んでいくべきなのか。

インタビューシリーズ「獣医療のミライ」では、
各分野で活躍する新進気鋭のスペシャリストたちに、
研究や臨床から得た経験をもとにした
未来へのビジョンや見解を語っていただきます。

第7回は東京大学大学院 農学生命科学研究科 獣医学専攻獣医内科学教室 准教授の富安博隆先生です。

臨床、研究の道と、人との出会い

―― 富安先生は腫瘍学と血液学の研究の第一線で活躍する研究者であり、同時に動物医療センターでの臨床、大学での教育とご多忙な日々を過ごしていらっしゃるかと思います。まずは、先生が獣医師になろうとお考えになったきっかけからお聞かせください。

小学生の頃にはすでに、小動物の臨床獣医師になりたいと思っていたのは覚えているんですが、はっきりしたきっかけはないのかもしれません。友人の家の柴犬が大好きで、学校帰りによく会いに行っていた思い出があるぐらいかな? 中高生になっても獣医師志望は変わらず、東京大学の理科II類に進み、専修は獣医学を選びました。実際に臨床の現場に触れ始めたのは大学 4 年生になり獣医内科学教室に所属してからで、研修医の先生方の監督のもとで保定や検査のお手伝いなど、さまざまな経験をさせていただいたんです。内科と言っても来る症例はほぼオールラウンドでした。実際の臨床の現場で学べることがすごく嬉しくて、振り返ってみれば、人生の中で最も臨床の勉強をしたのがこの頃だったかなと思います。

―― 当時の東京大学の研修医や先輩の先生方には、中村篤史先生や福島建次郎先生、金本英之先生がおられたとか。今や第一線で活躍されている方ばかりですよね。

そこは恵まれていたと思います。優秀な先生方に囲まれ、授業では学べないようなことを現場で沢山教わることができたというのは本当に幸運でした。

―― 腫瘍と血液の研究の道を選ばれたのは、何かきっかけがあったのでしょうか。

学部生時代、一昨年退官された辻本 元先生から「卒業研究のテーマとして腫瘍をやってみませんか」というお話をいただいたのがスタートです。辻本先生は自主性を重んじてくださる方ですから、具体的なテーマは自分で考えたのですが、研究に触れたこともない学部生が考える研究計画というのは、まあ、今思えば穴だらけ(笑)。どう直せばよいのか、なぜそうすると難しくなるのかなど、辻本先生に一つ一つ丁寧に教育してもらいながら卒論を仕上げました。腫瘍、中でも血液学に関わる研究を好きになったのは、私自身が根っからの理系の人間で、血液学が理詰めで解決できる部分が大きかったからというのもあるのですが、やはり、辻本先生のもとで学べた経験が大きく影響していると思います。