2月18日(水)に東京建物ブリリアラウンジ(中央区八重洲)にて、「GOOD SEA DAY:海藻が支えるネイチャーポジティブ」を開催しました。本イベントには、報道関係者や企業担当者ら約100名が参加し、主催するグッドシーが、海藻の養殖が海の生態系の回復に貢献していることを定量的に示す調査結果を報告しました。12月18日に当法人が公開した調査報告内容のサマリー(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000152135.html)に続いて、調査報告会当日の開催レポートを公開いたします。
グッドシーは、2023年に設立し「海藻を通じて海の生態系を豊かに育むこと」を目的とする団体です。公益財団法人日本財団の支援により、海藻類を含む海洋生態系の調査や、海藻を活用した食文化の調査、海藻に関する教育啓蒙活動にも取り組むことで、海藻を通じて海の生態系が豊かになる未来を目指しています。

ニュース概要
海藻の養殖による、海の生態系の定量調査
第一部では、グッドシー理事 蜂谷潤が登壇し、公益財団法人日本財団の支援を受けて2023年から2024年にかけて実施した、国内3か所での海藻栽培調査について報告しました。

グッドシー理事 蜂谷潤
海藻・藻場の役割について
海藻を含む藻場は海洋生態系において極めて重要な役割を果たしています。その主な機能として、水質浄化や光合成による酸素の供給、生物多様性の維持、さらには二酸化炭素を吸収して炭素を固定するなどがあります。藻場は、海洋生態系の基盤として小魚や動物プランクトンなどの餌を供給し、最終的には大型魚を支える存在です。
しかし、1990年には約34万ヘクタールあった藻場が、2017年には約17万ヘクタールまで激減しました。この減少は、護岸工事による水質悪化、水温上昇による海藻の成長低下、さらに海藻を食べる魚やウニによる「食害」が主な原因です。

食害海域において「養殖藻場」という手法で、継続的に大規模に海藻を茂らす
天然海藻の食害対策としては、ウニ駆除や海を網で仕切っての保護、海藻を囲う籠の利用などがありますが、これらはコストが合わないことから、大きく展開していく点で限界があります。そこで新たに提案したいのが海藻を海で養殖すること、つまり海藻を栽培することそのものが藻場の役割を果たすという「養殖藻場」という考え方です。養殖藻場は、海藻をロープや籠を使って育て、魚やウニの食害を回避しながら藻場を再生することができます。この手法は、収益性を伴う持続可能な取り組みとして漁師の協力を得やすく、新たな藻場の広域的な再生が期待されています。
今回の調査では、函館のコンブ、今治のヒジキ、天草のトサカノリの養殖藻場を対象に、生物多様性や生物量を比較しました。その結果、全ての調査地点でヨコエビ・ワレカラ類などの葉上動物が養殖藻場内で多く出現しました。最大で400万~2億個体の増加を確認でき、これが生態系を支える基盤として機能していることが明らかになりました。

養殖籠に群がるニジギンポ

養ヒジキに居ついたメバル
養殖藻場を広げることによる未来の展望
1年間で減っている天然藻場の面積が約6000haなので、仮に6000haを全て養殖藻場として活用することができたら、養殖藻場を広げることによって生まれる魚類個体数は、1800万個体という試算ができます。このような未来を実現するためには、全国各地の漁師さんの力が必要です。さらには、海藻の生産技術を効率化したり、最初の初期投資を乗り越えて事業として成立するように、海藻の付加価値を上げたかたちでの販路をつくることが重要です。これは、漁師さんだけで実現するのは難しいので、企業や自治体など、様々な立場の人たちが関わりながら養殖藻場拡大に向けて取り組んでいく必要があります。

海藻の養殖による生態系回復の定量調査報告書「GOOD SEA Future Report」は、Webサイト(https://goodsea.jp/posts/future-report-202412)からもダウンロードいただけます。