2023年、公益財団法人日本盲導犬協会(理事長:金髙雅仁)が、盲導犬使用者(以下、ユーザー)237人を対象に実施したアンケートにおいて、この1年間での「盲導犬同伴での受け入れ拒否の有無」について聞いたところ、「受け入れ拒否にあった」と回答したユーザーが103人、延べ208件の拒否が発生していることがわかりました。具体的な発生場所としては、飲食店が最多で、次いで交通機関、宿泊施設と続き、多くのユーザーが活動の制限を受けている現状があります。
 こうした受け入れ拒否の原因を探るため、日本盲導犬協会では、2024年8月に、事業所で働く従業員を対象にした『盲導犬および視覚障害に関する意識調査』を実施しました。法律の認知度、受け入れへの意識、視覚障害に対する認識などを聞く中で、受け入れ拒否につながる要因も見えてきました。
本報告では、47項目に及ぶアンケート結果の中から、データを抜粋して報告します。

ニュース概要

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【調査概要】
・調査名:盲導犬および視覚障害に関する意識調査
・調査対象:下記のいずれかの業種に従事する全国の20~79歳の男女
飲食業/宿泊業/医療業/小売業/不動産賃貸業/生活関連サービス・娯楽業/交通機関(タクシー、バス、鉄道/その他)
・地域:47都道府県
・調査方法:インターネット(オンライン)調査
・スクリーニング調査 有効回答数:約15,000人
・本調査 有効回答数:975人
※全国15,000人にスクリーニング調査を行い、うち975人分の回答を有効回答として分析。
※各業種一定のサンプル数を確保するため、均等回収に近い形で回収を実施。
・質問内容:アンケート47項目
・回収期間:2024年8月28日~9月2日
・実施機関:株式会社Quest Research
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結果1.法律の認識不足で盲導犬受け入れに不安の声、約7割が法律を知らず4割が受け入れを躊躇
 2002年5月に成立した身体障害者補助犬法(以下、補助犬法)では、障害者の自立と社会参加を促進するために、不特定多数の人が利用する施設、乗り物において、盲導犬同伴での利用を受け入れることが義務付けられています。そこで補助犬法の認知を聞いてみたところ、全体の66.9%が「補助犬法の存在を知らない」と回答しました。「補助犬法の存在を知っており、法律の内容もほぼ理解している」という回答は、交通機関(鉄道)を除きすべての業種で1割を下回りました。(図1)


 また、盲導犬同伴での利用を拒否することは、障害者差別解消法(以下、差別解消法)における、「障害を理由とする差別的取り扱い」に該当し禁止されていますが、差別解消法の認知についても、全体の70.5%が「差別解消法を知らない」と回答しました。「差別解消法の存在を知っており、法律の内容をほぼ理解している」という回答は、補助犬法同様どの業種も1割を下回り、いずれの法律も認知が進んでいないことが明らかになりました。(図2)


 さらに、受け入れに対する意識について聞いたところ、補助犬法で盲導犬同伴での利用が義務付けられていることについて、全体の77.5%が「賛成」と回答し、いずれの業種も「賛成」の回答が7割を上回りました。(図3)


 「盲導犬同伴での利用を拒むことが、不当な差別的取扱いに該当すると思うか」という質問でも、全体の68.5%が差別に「該当する」と回答し、小売業を除く業種で6割を上回りました。(図4)


 しかし、今後ユーザーの利用を受け入れるかを聞いてみたところ、「受け入れる」という回答は全体の52.6%にとどまり、6.7%が「受け入れない」、40.7%が「どちらとも言えない」と回答しました。飲食業、医療業、小売業、不動産賃貸業、生活関連サービス・娯楽業の5業種で「受け入れる」の回答が5割を下回り、「受け入れる」の割合がもっと高かった交通機関(鉄道)でも65.9%にとどまりました。(図5)