ポイント解説:心臓超音波検査による左心室の拡張機能の評価

心臓超音波検査による左心室の拡張機能の評価の柱は、パルスドプラ法による左心室流入血流速度の評価である※2。また、左心房のサイズの評価(第 14 回を参照)や組織ドプラ法による僧帽弁輪速度の評価も左心室の拡張機能の評価に役立つ※2

パルスドプラ法により左心室流入血流速度を記録する際には、心尖部四腔断面(あるいは心尖部五腔断面)において僧帽弁が開放したときの弁尖の間にドプラゲートを設定する。


図1 パルスドプラ法による左心室流入血流速度の記録
心尖部四腔断面において、僧帽弁が開放したときの弁尖の間にドプラゲートを設定している。
LA:左心房、LV:左心室、MV:僧帽弁


図2 パルスドプラ法により記録した健康な猫の左心室流入血流
左心室流入血流は、心電図のT波の後にくる拡張早期波(E波)とP波の後にくる拡張後期波(A波)の 2 つの波からなる。高心拍数の場合にはE波とA波は融合して 1 つの波になる(EA融合)。


組織ドプラ法により僧帽弁輪速度を記録する際には、心尖部四腔断面において左心室自由壁側あるいは心室中隔側の僧帽弁輪部(僧帽弁の付け根の部分)にドプラゲートを設定する。


図3 組織ドプラ法による左心室自由壁側の僧帽弁輪速度の記録
心尖部四腔断面において、左心室自由壁側の僧帽弁輪部にドプラゲートを設定している。
LA:左心房、LV:左心室、MV:僧帽弁


図4 組織ドプラ法により記録した健康な猫の左心室自由壁側の僧帽弁輪速度
左心室自由壁側の僧帽弁輪部にドプラゲートを設定している。僧帽弁輪速度は収縮期の上向きの波である収縮期波(S'波)、心電図のT波の後にくる下向きの波である拡張早期波(E'波)、心電図のP波の後にくる下向きの波である拡張後期波(A'波)の 3 つの波からなる。高心拍数の場合にはE'波とA'波は融合して 1 つの下向きの波になる。