2020年、米国獣医内科学会(ACVIM)から猫の心筋症の分類・診断・治療に関するコンセンサスステートメントが発表された※1

心筋症は日々の猫の診療においてよく遭遇する疾患である。心筋症に罹患した猫においては、生涯にわたり何も問題が発生しないこともあれば、うっ血性心不全や動脈血栓塞栓症といった重大な問題が発生することもある。

これまで猫の心筋症の分類、診断、治療には、たとえ猫の心臓病の専門家であったとしても「私はこうしている」という点が多く、このことが臨床獣医師を混乱させたり質の高い臨床研究の実施を妨げたりしてきた。

本連載記事では、2020 年にACVIMから発表された「猫の心筋症の分類・診断・治療に関するACVIMコンセンサスステートメント」を 21 回にわたって翻訳しながら要約する。また、特に重要と思われるポイントに対しては解説を加える。

最終回である今回はステートメントの結語について紹介する。またポイント解説として、今まで紹介しきれなかった「心臓超音波検査による左心室の拡張機能の評価」について簡単に紹介する。

結語

猫の心筋症は雑多な心筋疾患の集まりであり、その原因は不明であることがほとんどである。

心筋症は猫の生命を脅かす可能性があるが、有害なイベントが発生するリスクが高い猫を特定することは可能である。本ステートメントにおいては、一般臨床に携わる獣医師も心臓病学の専門家も利用できる心筋症の診断および治療に関する推奨項目を示した。

特に、新たな推奨項目として、猫の心筋症をフェノタイプに基づいて分類することを示した。ただし、心筋症の猫を治療する際には心筋症のフェノタイプよりも、ステージのほうが重要であることには留意すべきである。

心臓超音波検査は重要な情報を提供してくれる非常に有用な診断ツールである。一般臨床に携わる獣医師が行うFocused point-of-careのレベルの心臓超音波検査であっても、うっ血性心不全や動脈血栓塞栓症を発症するリスクが高い猫やうっ血性心不全を発症している猫を特定することはできるであろう。