非常に希な感染症ですが、ペットに触れ合う全てのヒトに感染する可能性のあることも忘れてはなりません

カプノサイトファーガ感染症が疑われる場合には、患者の臨床所見等に応じて早期に抗菌薬等による治療を開始することが重要となります。咬傷に対する抗菌薬としては、ペニシリン系、テトラサイクリン系や第 3 世代セフェム系抗菌薬等が一般的に用いられています。ただ、C.canimorsusにはβラクタマーゼを産生する菌株もあるため、ペニシリン系の抗菌薬を用いる際にはβラクタマーゼ阻害剤との合剤が推奨されます。なお、国内分離株の薬剤感受性は、ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系、フルオロキノロン系抗菌薬には感性であったが、アミノグリコシド系抗菌薬には耐性を示したとのことでした3)

ペットの飼い主に対しては、一般的な動物由来感染症予防の対応をお願いして下さい。日頃から、動物との過度の触れ合いは避け、動物と触れあった後は手洗いなどを確実に行うよう指導をお願いします。また、犬や猫に咬まれたり、ひっ掻かれたりしないように注意し、もし犬や猫に咬まれたり、ひっ掻かれたりしたら病院の受診を勧めて下さい。

以上、カプノサイトファーガ感染症の概要を紹介しました。非常に希な感染症であるものの、ペットの常在細菌による感染症であることから、ペットに触れ合う全てのヒトに感染する可能性のあることも忘れてはなりません。過度に恐れることはないと思いますが、本感染症だけでなく、一般的な動物由来感染症予防のためにも、ペットを飼うということはこのような感染症のリスクもあることを飼い主に説明することも臨床獣医師に課せられた役割であると思います。なお、厚生労働省のホームページにカプノサイトファーガ感染症について詳しく解説してあるので参考にして下さい4)



1) 高橋春樹ほか:Capnocytophaga canimorsusが分離された、敗血症・多臓器不全で搬送され救命し得た犬口咬傷の1例.IASR 28:299-300, 2007.
http://idsc.nih.go.jp/iasr/28/332/kj3322.html
2) Klumpp LC, et al.: Dog scratch fever secondary to Capnocytophaga species in a patient without risk factors, J Infect Dis Epidemiol 2020, 6:110
DOI:10.23937/2474-3658/1510110
3) 竹川啓史ほか:犬・猫の咬傷感染によるCapnocytophaga canimorsus敗血症の4症例.IASR 31:109-110, 2010.   http://idsc.nih.go.jp/iasr/31/362/kj3625.html
4) 厚生労働省:カプノサイトファーガ感染症に関するQ&A.
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou18/capnocytophaga.html

これまでの連載は下記リンクから見ることができます
https://media.eduone.jp/list/106/110/


田村 豊 Yutaka Tamura

酪農学園大学名誉教授

1974年 酪農学園大学酪農学部獣医学科卒業
1974年 農林水産省動物医薬品検査所入所
1999年 動物分野の薬剤耐性モニタリング体制(JVARM)の設立
2000年 検査第二部長
2004年 酪農学園大学獣医学部獣医公衆衛生学教室教授
2020年 定年退職(名誉教授)

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