ステージB1 の治療

エビデンスが現状不足しているため、無徴候の心筋症に罹患した猫に対する治療は、現在、論争の的である。ステージB1 の心筋症の猫の大部分は将来臨床徴候を呈さない。しかしながら、ステージB1 の猫に対しては中等度から重度の左心房の拡大が発生していないか(つまりステージB2 に移行していないか)を年に 1 回モニタリングすることが推奨される(推奨クラス I)。ステージB1 の猫はうっ血性心不全(Congestive heart failure:CHF)や動脈血栓塞栓症(Arterial thromboembolism:ATE)が発生するリスクが低いと考えられるため、一般的にステージB1 に対する推奨されない(エビデンスレベル 低、推奨クラス III)。

動的な左心室流出路閉塞(Dynamic left ventricular outflow tract obstruction:DLVOTO)の存在が、猫の肥大型心筋症における合併症発生率や死亡率の上昇と関連するというエビデンスはない。また、β遮断薬であるアテノロールは無徴候の肥大型心筋症に罹患した猫の5年生存率に何も影響を与えなかった※2。しかしながら、アテノロールがDLVOTOの圧較差や心拍数を低下させることは期待できる。そのため、もし継続して投与することが可能であれば、重度のDLVOTOを伴ったステージB1 の肥大型心筋症の猫に対してアテノロールを投与することを考慮してもよいかもしれない(エビデンスレベル 低、推奨クラス IIb)。