うっ血性心不全の発症を疑う猫に対するアプローチ

身体検査において頻呼吸、努力呼吸、肺の聴診におけるクラックル、低体温、および奔馬調律を認めた場合には猫がCHFを発症していることを強く示唆している。ただし、CHFの猫は頻呼吸および努力呼吸しか呈さないこともある。

胸部X線検査は心原性肺水腫の検出法のゴールド・スタンダードであると伝統的に考えられてきたが、呼吸困難を呈する猫において胸部X線検査を撮影する際にはストレスが最小限となるように注意すべきである。肺の浸潤性病変および心拡大はCHFの診断の鍵となる所見であるが、左心房の拡大や肺血管の拡張といったCHFを示唆する古典的な所見はCHFの猫において検出できることもあればできないこともある。

もし胸部X線検査を安全に撮影できなさそうな場合には、Focused point-of-careのレベルの心臓超音波検査あるいはpoint-of-careのNT-proBNP測定の実施を考慮すべきである(エビデンスレベル 高、推奨クラス IIa)。Focused point-of-careの心臓超音波検査において胸水あるいは肺のBラインと重度の左心房の拡大が検出された場合にはその猫がCHFを発症していることを強く示唆している。point-of-careのNT-proBNP測定が正常であった場合には、猫の呼吸困難の原因がCHFよりも呼吸器疾患である可能性がより高いことを示唆している。CHFと診断した猫の状態が一旦安定した後には、Standard of careあるいはBest practiceのレベルの心臓超音波検査の実施を考慮すべきである(エビデンスレベル 低、推奨クラス IIa)。

参考文献
1. Luis Fuentes V, Abbott J, Chetboul V, et al. ACVIM consensus statement guidelines for the classification, diagnosis, and management of cardiomyopathies in cats. J Vet Intern Med. 2020;34:1062-1077.

次回は、「猫の心筋症の治療」のステージB1における治療について紹介する( 2 月 1 日に公開予定)。

これまでの連載はこちら
https://media.eduone.jp/list/106/119/


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※VETERINARY BOARD 2021 年 7 月号では、「猫の肥大型心筋症 アップデート -HCMとHCM phenotype-」(監修:中村健介先生)の特集を掲載しています。本連載をご執筆いただいている大菅先生にも症例報告をご執筆いただきました。
出版:エデュワードプレス
サイズ:A4判 96頁
発行年月日:2021年7月15日


本体価格 4,400円(税込)

大菅辰幸 TATSUYUKI OSUGA

2012年 北海道大学 獣医学部卒業
2012年 北海道大学大学院 獣医学研究科 博士課程入学
2013年 日本学術振興会 特別研究員(DC1)
2015年 北海道大学大学院 獣医学研究科 博士課程修了、博士(獣医学)
2016年 日本学術振興会 特別研究員(PD)
2016年 北海道大学大学院 獣医学研究院 客員研究員
2016年 北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター 学術研究員
2017年 北海道大学大学院 獣医学研究院 附属動物病院 特任助教
2020年 宮崎大学 農学部獣医学科 助教

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