新型コロナウイルス感染症の陰に隠れて目立たなくなった薬剤耐性菌感染症ですが、日本で2017年にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌とフルオロキノロン耐性大腸菌による感染症で約 8,000 名が亡くなる1)など、今でも医療において深刻な問題となっています。薬剤耐性(AMR)の問題は抗菌薬の不適正な使用が主な原因であり、医師や獣医師のみならず広く国民が抗菌薬についての知識や理解を深めて正しく使って欲しいものです。

しかし、残念なことに国民にとってはそれほどの関心事でないようで、さらに普及・啓発活動を強化することが求められています。これらの活動を進めるにあたって、国民の意識を知ることは極めて重要と考えられます。そこで、国立国際医療研究センター病院のAMR臨床リファレンスセンターでは今年も一般の方々を対象に、「抗菌薬・抗生物質に関する意識調査」2)を実施し、その結果を公表しています。今回はこの意識調査成績の概要を紹介し、未だ抗菌薬や薬剤耐性に関する理解が不十分である実態を知っていただきたいと思います。

調査で分かった間違った知識の現状

調査は2021年8月に実施し、全国の10代から60歳以上の男女700名を対象にしました。調査方法はインターネットに答えるという方法でした。まず、抗菌薬・抗生物質の知識についての質問です。「抗菌薬・抗生物質という言葉を聞いたことがあるか」を訊ねたところ、84.7%の方が聞いたことがあると答えました。聞いたことがないと答えた方が15.3%で、最も多かったのが 20 代(25.2%)と気になるものでした。義務教育で必ず触れている言葉の筈ですし、若者で人気の漫画である「JIN-仁-」でもペニシリン製造が取り上げられているにも関わらず記憶にないことに驚かされます。

次に「抗菌薬・抗生物質という言葉を聞いたことがある」と答えた方に「抗菌薬・抗生物質はウイルスをやっつけるか」と聞いたところ、あてはまらないと正解を答えた方は18.0%で、あてはまると不正解の方が59.4%もいました(図1)。これは2020年の調査成績とほぼ同じでした。言葉は知っているものの、正確な作用までは理解していないということのようです。さらに先の質問と関連しますが、「抗菌薬・抗生物質という言葉を聞いたことがある」と答えた方に「抗菌薬・抗生物質はかぜに効くか」を訊ねたところ、あてはまらないと正解をした方が24.5%で、あてはまると不正解であった方が46.4%でした(図2)

かぜの原因のほとんどがインフルエンザウイルスなどのウイルスということを知らないのか、または先の質問のように抗菌薬・抗生物質の作用を知らないかです。年代別にみると、 40〜60代では30%前後が正解しているものの、10〜30代では10〜20%程度に低くとどまりました。これも2020年の調査成績と同じ傾向でした。それ以外では、「抗菌薬・抗生物質は治ったら早くやめる方がよい」は間違いと正しく回答した人は29.5%であり、「抗菌薬・抗生物質を飲むと下痢などの副作用がしばしばおきる」と正しく回答した人は 38.8%でした。これら2問には正しく回答した割合が高く、正しい知識が身についてきている可能性があります。


図1.「抗菌薬・抗生物質はウイルスをやっつけるか?」の問いに対する回答


図2.「抗菌薬・抗生物質はかぜに効くか?」の問に対する回答