悪性腫瘍(ガン)は今なおヒトの死因の第一位であり、1年間に全世界で800万人が亡くなるなどの人類の健康を脅かす最大の脅威といえます。その治療薬の開発が多くの製薬企業で鋭意進められ、さまざまな抗ガン剤が実際の臨床現場で応用されています。

ただ、耐性や副作用の問題など今もって決定打がなく、より有効で安全な治療法が求められています。最近、外科的治療法、放射線治療法、抗ガン剤治療法に続く第 4 の治療法として免疫治療法が脚光を浴びています。その代表的な製剤が免疫チェックポイント阻害剤になります。

2017年2月に抗ガン剤(100mg/バイアル)の薬価が73万円から半額になったことでも話題となりました。その新しいタイプの治療薬の開発に深く関わり、ガン治療に革命をもたらした京都大学特別教授である本庶佑先生に、2018年度ノーベル医学生理学賞が授与されたことも記憶に新しいところです。日本からの授賞者は2年ぶりで26人目になりました。様々な分野での国際的地位が低下している日本としては実に嬉しいニュースとなり、経済的にも精神的にも困窮する若い研究者の励みになっています。今回は本庶先生の業績を紹介するとともに、この夢のガン治療薬について紹介したいと思います。また、この医薬品の動物における応用についても紹介したいと思います。

活性化T細胞の表面に発現する分子であるPD-1を発見

私たちの体の中でガン細胞が絶えず生み出されていますが、通常は免疫細胞(活性化T細胞)により細胞死を誘導して排除されガンから回避しています。しかし、高齢や免疫不全になるなどでガン細胞の排除がうまく機能できない時にガンになるのです。この活性化T細胞の表面に発現する分子であるPD-1(Programmed cell death 1)を発見したのが本庶先生の研究業績になります(図1)

PD-1に結合するタンパク質のリガンドであるPD-L1およびPD-L2をある種のガン細胞が発現しており、PD-1と結合することによりT細胞の活性を抑制してガン細胞を活性化させ増殖させてしまいます。このPD-1とPD-L1あるいはPD-L2の結合を阻害できればT細胞がふたたび活性化してガン細胞を攻撃することになるのです。そこで開発されたのがPD-1に対する抗体(ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体)でニボルマブと呼ばれています。ニボルマブをガン患者に投与するとT細胞のPD-1と結合して免疫の働きにブレーキがかからなくなり、ガン細胞を攻撃するわけです。


図1 腫瘍における免疫抑制(回避)と開発抗体による治療メカニズム