東京アロエ(本社:東京都練馬区)は本日、日本の特産種である「キダチアロエ」に含まれる薬効成分をイメージング質量分析(Imaging Mass Spectrometry)技術を用いて、世界で初めて*可視化に成功したことを発表します。この革新的な試みは、福島大学 食品機能学Ⅱ研究室の平 修(たいら しゅう)教授の下で行われ、キダチアロエが持つ健康効果を科学的に解明する一助になります。(*イメージング質量分析に関する論文の範囲)

ニュース概要

アロエ成分の視覚化を試みたきっかけ
自社農園で有機アロエを栽培し、それらを健康食品や化粧品として販売している東京アロエは、昔から「アロエは医者いらず」「万病の薬」といった” おばあちゃんの知恵”として評されている事象を科学的に明らかにする方法を模索していました。
一方、2021年福島大学では、全国の大学で初めて「高速質量分析イメージ取得システム」を導入しました。このシステムは、食品の成分を超高精度で視覚的に表示することが可能で、食品の栄養成分の位置や量を明確に示すことができます。これにより、植物や栄養的特徴を把握しやすくなり、他の食品との比較分析も容易に行えます。
福島大学の「高速質量分析イメージ取得システム」の有効性を知った東京アロエは、キダチアロエの薬効成分を視覚化する世界初の実験を試みました。

これまでに発表されている主なキダチアロエの薬効成分の実証実験
キダチアロエに含まれる薬効成分(アロエエモジン、アロエニン、アロイン)については、これまでに多くの実証実験が行われています。主な例をご紹介します。

マウス大腸炎および発がんモデルに対する低用量アロエエモジンの修飾作用
研究代表者:藤田保健衛生大学 藤田記念七栗研究所生化学研究部門 教授 新保 寛
研究概要:アロエエモジン(AE)は抗がん活性や抗炎症効果を有することが報告されている。我々はApcMin/+マウスの大腸腫瘍発症のデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)処置の有無に対する低用量AEの修飾作用を調べた。その結果、低用量AEの混餌投与は、DSS未処置・処置の双方でMinマウスの大腸腫瘍の発生を低下させた。さらに、低用量AE投与はMinマウスの大腸粘膜の細胞増殖能を抑制した。

主作用以外に血糖降下作用をもつ健康食品と血糖降下薬の併用摂取による相互作用の研究
研究代表者:京都女子大学 家政学部 教授 川添 禎浩
研究概要:キダチアロエは緩下作用を目的としたアロエ健康食品に用いられ、アロエは血糖値に影響を与えるという報告がある。そこで、マウスにおいて、キダチアロエと血糖降下薬トルブタミド(TB)の相互作用を検討した。20%キダチアロエエパウダーはTB と併用すると血糖値をより低下させるが、TBの血糖降下作用を抑制し、血中TB濃度も減少させことから、TBの吸収を減少させると示唆された。キダチアロエとTBの併用による血糖値の低下には成分バルバロイン(BA)*が関与していることが考えられた。しかし、アロエ健康食品の一日摂取目安量に含まれるBA量は、マウスのBA摂取量よりもかなり少量であった。
*アロイン

炎症を背景としたマウス大腸発がんモデルに対するキダチアロエ低分子成分の修飾作用
研究代表者:藤田保健衛生大学 藤田記念七栗研究所生化学研究部門 教授 新保 寛
研究概要:キダチアロエ抽出物(アロエ)やその主薬成分であるアロインは、抗炎症作用や抗腫瘍効果を有することが報告されている。
我々はApc遺伝子欠損Minマウスにおけるアロエとアロインのがん予防効果を検討した。最初に、Minマウスに基礎食と低用量アロエ含有食を与えると、アロエは腸管腫瘍数を有意に低下させた。次に、高脂肪食摂取条件下で低用量アロエやアロインの影響を調べた結果、アロインは腸管腫瘍数を有意に減少させ、血漿アディポネクチンを上昇させた。
これらの結果は、低用量アロインは高脂肪食摂取Minマウスの腸管腫瘍発症に対して予防効果を有し、血中アディポネクチン上昇と部分的に関連することを示唆する。

Nano-PALDIイメージング質量分析の結果
「キダチアロエのイメージング質量分析計測」
本研究では、特にアロエの主要成分であるアロエエモジンやアロエニン、アロイン(バルバロイン)などが、植物体内でどのように分布しているかを詳細に分析。これまでの研究で得られた成分の存在情報を超え、その局所的な濃度までを精密に映し出しました。この成果は、アロエ成分の抽出や製品化の過程での品質管理、効率化に大きく寄与することが期待されます。

実施期間:2024年1月~4月
実験方法:高速質量分析イメージ取得システムを使用したキダチアロエ成分の視覚化

【計測結果】
キダチアロエに含まれる、アロエエモジン、アロエニン、アロインを標的にイメージング質量分析(IMS)を用いて局在解析の計測結果は下記のとおり。

MSMS:各標準品、抽出液で構造を確認
アロエエモジン(MW 270.2)


アロエニン(MW 410.3)


アロイン(MW 418.0)


イメージング質量分析(IMS)による局在解析