2020 年、米国獣医内科学会(ACVIM)から猫の心筋症の分類・診断・治療に関するコンセンサスステートメントが発表された※1。
心筋症は日々の猫の診療においてよく遭遇する疾患である。心筋症に罹患した猫においては、生涯にわたり何も問題が発生しないこともあれば、うっ血性心不全や動脈血栓塞栓症といった重大な問題が発生することもある。
これまで猫の心筋症の分類、診断、治療には、たとえ猫の心臓病の専門家であったとしても「私はこうしている」という点が多く、このことが臨床獣医師を混乱させたり質の高い臨床研究の実施を妨げたりしてきた。
本連載では、2020 年にACVIMから発表された「猫の心筋症の分類・診断・治療に関するACVIMコンセンサスステートメント」を 12 回(予定)にわたって翻訳しながら要約する。また、特に重要と思われるポイントに対しては解説を加える。
第 2 回である今回は、まず本ステートメントの策定方法について紹介する。続いて、本ステートメントの各推奨項目に付与されている「エビデンスレベル(その項目はどれくらい強い根拠に基づいているか)」と「推奨クラス(その項目をどれくらいの強さで推奨するか)」の定義について紹介する。

本ステートメントの策定方法
本ステートメントは、修正Delphi法という手法を用いることにより策定された。具体的には、まずコンセンサスステートメント委員がステートメントの原稿を作成し、その後、委員によるオンライン投票、対面会議、ビデオ会議を通してその原稿を修正した。最終的に委員 9 人中 6 人以上が同意した事項を“コンセンサスが得られた事項”として本ステートメントに記載した。本ステートメントの策定にあたっては、PubMedにおいて“cat”および“cardiomyopathies”を入力することにより検索された 475 文献を含むそれ以上の数の文献が委員により再分析された。