これからの獣医療はどうなっていくのか。
そして、獣医師は今後どのように学んでいくべきなのか。

インタビューシリーズ「獣医療のミライ」では、
各分野で活躍する新進気鋭のスペシャリストたちに、
研究や臨床から得た経験をもとにした
未来へのビジョンや見解を語っていただきます。

第3回は日本獣医生命科学大学の手嶋 隆洋先生です。

獣医師、そして研究の道への出会い

―― 手嶋先生が獣医師になりたいと考えはじめたのは、いつ頃だったのでしょうか?

 おそらく小学生の頃だと思います。よくある話なのですが、飼っていた犬が病気で死んでしまって。当時は外で飼うのが当たり前の時代ですから、今では考えられないくらい過酷な状況での飼育でした。柴の混ざった雑種で11歳齢ぐらい、動物病院にも何度か連れていったものの、あまりにもあっさり亡くなってしまいました。死因が何だったのかもわかりませんでしたし、当時はそこまで熱を入れて治療するという時代でもなかったのかもしれません。ですが、自分の中ではモヤモヤしたものを感じ続けていて、漠然とですが「獣医師を目指したいな」と思いはじめました。ですが理由あって、理系の別の分野の大学に進んでしまいました。

―― 一度、別の進路を選ばれていたのですね。

 自分の中のモヤモヤは残っていましたので、中退して、改めて日本獣医生命科学大学(日獣大)の獣医学科を受験し直しました。日獣大だけが、当時住んでいた大阪からすぐ行ける京都で受験できて、私学の中では一番学費も安かったという単純な理由です。研究室についても、僕らの頃は本人の希望が通りやすい時代で、病理と外科のいずれかで悩み「より入りやすい外科に」という選び方でした。外科の研究室で担当教官だった原 康先生が下垂体の手術を始められたのが、ちょうど私が大学院に進む少し前ぐらいだったと思います。大学院でも下垂体やクッシング関連の研究と臨床に携わっていきました。


― 下垂体の手術には、どういった難しさがあるのでしょうか? ご苦労された点などは?

 実際に手術されていたのは原先生で、僕は術後管理や病理診断を担当していました。原先生は「下垂体腫瘍が原因なんだから、第一選択は外科だろ」と、簡単におっしゃるんですよ(笑)。「口の中から鼻の中を通して、頭蓋骨の底を削って、下垂体を取り出すだけだ」って。

― プロフェッショナルだからこそ、の言葉ですね。

ええ、本当に。あとは、東海大学伊勢原キャンパスにある医学部に、下垂体領域の病理を専門にされている長村義之先生がいらっしゃって、いろいろとご指導いただきました。ミーティングが朝早くからあったので、伊勢原まで通うのはきつかったんですが(笑)、やはり、そこで得られる知見は非常に大きかった。日獣大に閉じこもっているだけだったら、それほどよい研究はできなかったと思います。