最終回(前編・後編あり)の本記事では、緊急時の対処方法について述べていきたい。「緊急時」といえど、「導入を始めたけど静脈留置が抜けていた」から「心肺停止」まで幅が広い。そのため、筆者がよく対処方法を聞かれる事例を選んでみた。

挿管ができない

導入時に挿管がなかなかできないことは頻繁には起こらないが、決して少なくもない。特に犬と比べて猫は喉頭痙攣が起きやすく、挿管のタイミングがなかなか掴めないこともある。

その他には、短頭種は軟口蓋の長さで喉頭が見にくかったり、口腔内の腫瘍が視界を妨げたり、困難な挿管が起こる状況はまちまちである。そんな中、みるみる舌色がピンクから青紫色になると焦りも生じるだろう。そのため、困難な挿管が予想される患者を導入前から把握してもしもの場合に備えることは大事になる。

また、導入前に前酸素化を行うことや実際に経口気管チューブでの挿管に時間がかかっている場合に次の行動へ移る決断力は必要不可欠である。下記は困難な挿管が予想される時に考慮する項目である。

■呼吸抑制ができるだけ少ない薬選び(例:前投薬でしっかり鎮静をかけ、呼吸抑制の強い導入薬の投与量削減を目指す)
■パルスオキシメーターを活用することで酸素飽和度を把握(客観的指標)
■適切な長さの喉頭鏡を使用(ライトがつくかも確認)
■スタイレットを使用(喉頭や気管支内を傷つけないよう注意)
■リドカインスプレーの活用
■予想より小さい気管チューブも用意
■内視鏡の準備
■気管切開術や経気管チューブ設置の想定

挿管が困難な場合、手に持っている経口気管チューブを押し込もうとしてしまう傾向が見られるが、それは喉頭を傷つけ浮腫をおこしてしまうことがあるので十分な注意が必要である。