事前準備の重要性

麻酔管理というと、投与薬に関わるプロトコルや人工呼吸器の設定などに焦点が当たることが多いが、鎮静であろうと麻酔管理であろうと、事前準備の重要性を忘れてはいけない。何が起こるかわからないとされる麻酔管理であっても、血圧の低下など、起こっても不思議ではない問題はある程度予測できる。

例えば、幼若齢の小型犬の手術に関しては、低体温や低血糖への配慮も成犬以上に必要となる。患者の情報はもちろん、処置内容も考慮しながらその患者が周術期にどのような問題に遭遇しやすいかなどを事前に考え、必要であればそれに備えることで、問題が起きたときにも落ち着いて行動しやすい。

処置に必要な麻酔深度を保ち、患者の恒常性(ホメオスタシス)をできる限り維持し、十分な疼痛管理を行い、最終的に覚醒(そしてその先の退院)につなげる。安全性を高める麻酔・疼痛管理を行うには何が必要なのかを考えると、自ずと必要なものがみえてくるのではないだろうか。

必要な器具のほかに、容体や基礎疾患などの患者に関する情報、処置の内容から侵襲性や予想される所要時間などを知っておく必要がある(図1)。投与薬に関しては施設のプロトコルが決められている場合が多いが、そのプロトコルを軸にしながらも各患者に対して変更が必要なのかを確認するのが適切である。


図1:事前準備