2019 年に、免疫介在性溶血性貧血(immune-mediated hemolytic anemia:IMHA)の診断・治療に関するコンセンサスステートメントがアメリカ獣医内科学会(American college of veterinary internal medicine:ACVIM)より発表された。IMHAは赤血球に対し自己抗体が産生されることで発症する代表的な免疫介在性疾患であり、特に犬では溶血性貧血の原因として一般的であること、貧血以外の合併症も多く致死率が高いことから、その診断・治療の理解は重要である。

コンセンサスステートメントは、診断編と治療編の 2 部構成となっている。
・ACVIM consensus statement on the diagnosis of immune-mediated hemolytic anemia in dogs and cats.
・ACVIM consensus statement on the treatment of immune-mediated hemolytic anemia in dogs.

診断編は犬と猫に関する記述であるが、治療編は犬のIMHAに限定されている。猫のIMHAの発生率は犬に比べ低く治療に関する情報が少ないこと、また病気の特徴も異なることから、犬の治療編の内容を単純に猫に外挿することはできない点には注意が必要である。

連載第 3 回目は、抗赤血球抗体の証明と溶血の根拠について解説する。

抗赤血球抗体の証明

抗赤血球抗体の検出方法として、8 人中 5 人のパネルメンバーは直接クームス試験(DAT)を選択し、3 人はDATとフローサイトメトリーの両者を等しく有用な検査であるとみなした。赤血球を洗浄後も自己凝集が持続しDATを実施できない場合、「貧血+溶血+赤血球洗浄後も持続する自己凝集」の 3 点で、IMHAの診断を満たす十分な根拠となると考えらえる。

2006〜2016 年に公表された研究では、DATの感度は犬:61〜82%、猫:82%と報告されている。一方、特異度は犬:94〜100%、猫:95〜100%と報告されている。小規模集団を対象とした実験的研究では、フローサイトメトリーの感度は最大 100%と報告されていたが、より大規模集団を対象に日常的な臨床検査として評価した研究では、感度 67%(95%信頼区間:53〜79%)であった。また、一般状態が低下した陰性対照を含んだ検討において、フローサイトメトリーの特異度は 87.5%(95%信頼区間:47〜100%)から92%(95%信間:88〜95%)と報告されている。

DATに関しては、サンプルを 4℃で最大 7 日まで冷蔵保存しても、結果に影響しなかったと報告されている。また、免疫抑制療法を開始することによって、ただちにDATが陰転化するわけではなく、陰転化するまでに要する時間には個体差がある。フローサイトメトリーの検討では、免疫抑制療法によって抗赤血球抗体陽性赤血球の割合が低下することが示唆されている。これらの背景から、DATまたはフローサイトメトリーのサンプルは可能な限り治療開始前に採取することが推奨される。

一方、輸血がDATの結果に及ぼす影響に関しては大規模な調査が行われておらず、情報は限定的だが、輸血実施後の犬 21 頭でDATを実施したところすべて陰性であったという報告があるため、検査前に輸血をしたからといってDATの実施が不可能ではないと考えられる。しかしながら、複数回の輸血を実施した犬において、IMHAの徴候がないにもかかわらずDAT陽性であったことが報告されており、またヒトではDAT陽性の遅発性溶血性輸血反応も報告されている。したがって、DATのサンプルは可能な限り輸血実施前に採取することが推奨される。