ブドウ摂食による食中毒の考察

まず、原因物質は今のところ不明であるようです。原因食は生のブドウだけでなく、レーズンやブドウジュースなどの加工品によっても発症します。症状としては、摂食して数時間後に下痢や嘔吐、乏尿を呈し、重症の場合は急性腎不全になることもあります。腎不全で腎臓の機能が低下すると、毒素や老廃物が体内に留まり尿毒症などを併発し、最悪の場合は死亡するというものです。これまで世界各国で研究報告された、イヌのブドウ摂食による腎不全についてまとめられたものを表に示しました(※4)。


これによると、犬種としてレトリバーが多く、性別はオスが多いようです。これは性別に偏るというより、オスの好奇心がメスより旺盛であることが影響したものと考えます。摂取量も最低が2.8g/kgですので少量でも発症する可能性があり、発症すると多くは死亡するか安楽死となっています。

このようにイヌにとって厄介な食べ物であるブドウですが、人間にとっては美味しい果物であり、テーブルの上に放置することも多々あるように思います。そこで注意していても室内で飼育するイヌが誤食することも想定されます。万が一誤食して発症した場合、乏尿になったイヌの生存率は24%で、無尿になれば12%ともいわれています。発症すれば直ちに治療を受ける必要がありますが、腎不全に有効な人工透析装置を保有する動物病院は極めてまれであり、大学の附属動物病院でも対応が難しいと考えます。そのことを思えば、イヌを飼育する飼い主の皆さんにブドウの誤食を回避する方法を常に考えるように指導して欲しいと思います。


【記事の参照・引用元について】

(※1)Gwaltney-Brant S, Holding JK, Donaldson CW, Eubig PA, Khan SA : Renal failure associated with ingestion of grapes or raisins in dogs, J Am Vet Med Assoc, 218, 1555h1556 (2001)
(※2)伊東輝夫,西敦子,池田文子,串間栄子,串間清隆,内田和幸,椎宏樹:ブドウ摂取後に急性腎不全を発症して死亡した犬の1例, 日本獣医師会誌 63:875-877,2010.
(※3)藤森康至:ぶどう中毒を発症した犬の考察, 岩手県獣医師会報 44:63-65,2018.
(※4)Cortinovis C and Caloni F: Household Food Items Toxic to Dogs and Cats. Frontiers in Veterinary Science. 22 March 2016.
https://doi.org/10.3389/fvets.2016.00026


田村 豊 Yutaka Tamura

酪農学園大学名誉教授

1974年 酪農学園大学酪農学部獣医学科卒業
1974年 農林水産省動物医薬品検査所入所
1999年 動物分野の薬剤耐性モニタリング体制(JVARM)の設立
2000年 検査第二部長
2004年 酪農学園大学獣医学部獣医公衆衛生学教室教授
2020年 定年退職(名誉教授)

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