“実践ありき”で、研究を進めた

――大学院で「犬のしつけ」をどのように学ばれていったのか、詳しくお話を聞かせてくださいますか?

鹿野先生:太田教授は「実践的な活動も、理論に基づく研究も、どちらもやらなければならない」という考えでした。私たちが携わっていた分野は実生活に近いので、ラボにいて研究するだけでは意味がないんですね。フィールドワークで得られたデータを使って研究することが必要でした。太田教授からは常々「フィールドワークに則した研究をしなさい」と言われてきました。

――実践の「活動」と「研究」を両立することは、とても大変なように思えるのですが。

鹿野先生:実際、ものすごく大変でした(笑)。突然「大阪に、研究活動に協力してくれる牧場があるから、行ってきなさい」と言われたときは驚きました。その牧場では111犬種、300頭ほどいるけれど、4~5人で運営しているから福祉的によくない。だから君たちが行って手伝いをしながら、研究してきなさい」と。111犬種を、一挙に目にする機会なんてないですよね!学生が寝泊まりをする家は研究室で手配していただきましたが、交通費は実費。お金を稼ぐために、大阪でもしつけ教室を行っていましたね。


――そこで培われたであろうタフさと、ユニークな経験をお聞きしていると「人と犬の関係学」の分野で、日本初の博士号を取得されたのも頷けます!

鹿野先生:当時「人と動物の関係学」の分野で学位を出していたのは、日本では麻布大しかありませんでした。それまで皆が興味を持っているものの基礎研究もなく、学問としては成立していなかった分野でしたから、何を研究するのが正解なのかわからない状態でした。太田先生も私も手探りだったのを覚えています。未開発で未発展の分野を「人と動物の関わりを学びたい」という想いひとつで開拓していきました。博士号を取ったのは太田先生のススメがあったからなのですが、麻布大でそのようなチャンスをいただいたことにとても感謝をしています。