麻布大学在学中は「人と犬の関係学」の分野で日本初の博士号を取得。
卒業後には「株式会社Animal Life Solutions」を設立。
これまでどのように研鑽を積んできたのか。
そして、犬のしつけにおいて、動物看護師が飼い主さんに伝える上で大切なことは何なのか。
行動学やしつけのスペシャリストである、鹿野 正顕先生にお話を伺いました。

犬を大切にする世の中を作りたい
――「人と犬の関係学」の分野で日本初の博士号を取得された鹿野先生ですが、「行動学」や「しつけ」に興味を持ち始めたのは、いつ頃からでしょうか。
鹿野先生:最初から「行動学」や「しつけ」に興味を持った、というわけではありません。ただ、「どうすれば、人と犬がよりよく共生できるか」ということについては、子供のころから漠然と興味を持っていました。というのも、当時は「犬を拾ってきて飼うけれど、動物病院に連れて行ってお金をかけて予防接種をする、治療する」という考えがなかった時代。外飼いであってもフィラリア予防もせず、平均寿命は2~3歳くらいだったように思います。子供心に「犬を大切にする世の中を作りたい」と考えていました。高校で進路について考えはじめたときも「動物に関わる仕事に就きたい」という想いに変わりはありませんでしたね。
――獣医大を志したのは自然の流れだったのですね?
鹿野先生:はい。私が麻布大に入学した当時は、動物応用科に「動物人間関係学研究室」ができたばかりでした。当時の教授は、日本人の女性で初めて獣医師になった、増井光子先生。そこで「人と動物の関係学」というものがあることを知り、自分のしたいことができるかも!と考えました。
――大学院でも増井先生のもとで学ばれていたのですか?
鹿野先生:増井先生は「よこはま動物園ズーラシア」の園長に専念することになりましたので、麻布大を去ってしまうことになりました。本格的に「人と動物の関係学」を学んだのは、太田光明先生が研究室に来られてからですね。この分野の学問は非常に幅が広く、色々な側面があります。研究室も大所帯になっており、学生の数はなんと120名ほど。研究室自体はアニマルセラピーを主軸にしていましたが、私は動物のトレーニングや問題行動について研究するチームを立ち上げました。研究活動の一環で「犬のしつけ教室」を行うことで、一般の飼い主さんやワンちゃんと触れ合う機会もあり、その後の事業化に繋げることができたのは大きかったですね。