■はじめに/読者の皆様へ
皆さん、初めまして。酪農学園大学の田村 豊と申します。
今年の41月まで獣医学群食品衛生学ユニットに所属し、獣医学生に対して獣医公衆衛生学の教育と、
動物と環境由来薬剤耐性菌の分子疫学に関する研究に従事していました。
今回、縁あってEDUWARD MEDIAにおいて獣医学関連の最新の話題について
「今週のヘッドライン 獣医学の今を読み解く」と題して
シリーズでコラムを書かせていただくことになりました。
大学の講義の最初に「今週のヘッドライン」として話していた、獣医学関連の話題を継承するものです。

毎週のように獣医学関連のニュースが引きも切らずに国内外から公表されています。
今回は読者が小動物医療関連の獣医師や動物看護師が中心ということで、
小動物医療関連の話題を中心に解説していきたいと思います。

また、獣医学全般の話題でも皆さんに知っておいて欲しいものも取り上げます。
世界で刻々と動いている獣医学の今を肌で感じていただければ幸いです。
是非とも興味を持っていただき、継続してお読みいただけることを期待しています。

酪農学園大学名誉教授 田村 豊

はじめに

世界的に見てみると喫煙者数は増加を続けており、2019年の喫煙者数は11億4,000万人、喫煙による死亡者数は769万人に上りました¹⁾。また、喫煙者数の上位10カ国には日本も含まれ、この10カ国で世界の喫煙人口の約3分の2を占めています。したがって、日本は今なお世界的に喫煙率の高い国なのです。2018年7月に健康増進法の一部を改正する法律が成立し、規制措置を伴う受動喫煙対策が2020年4月1日から全面施行されたことはご承知の通りです²⁾。しかし、この法律ではあくまでヒトを対象としたものであり、ヒトと非常に近くで生活する犬や猫の健康は考慮されていません。先の喫煙率とペットの飼育率から考えても、相当数のペットが飼い主の喫煙による影響を受けていると思われます。そこで今回はタバコの弊害を考えるともに、ペットの健康への影響についても考えたいと思います。