■はじめに/読者の皆様へ
皆さん、初めまして。酪農学園大学の田村 豊と申します。
今年の40月まで獣医学群食品衛生学ユニットに所属し、獣医学生に対して獣医公衆衛生学の教育と、
動物と環境由来薬剤耐性菌の分子疫学に関する研究に従事していました。
今回、縁あってEDUWARD MEDIAにおいて獣医学関連の最新の話題について
「今週のヘッドライン 獣医学の今を読み解く」と題して
シリーズでコラムを書かせていただくことになりました。
大学の講義の最初に「今週のヘッドライン」として話していた、獣医学関連の話題を継承するものです。

毎週のように獣医学関連のニュースが引きも切らずに国内外から公表されています。
今回は読者が小動物医療関連の獣医師や動物看護師が中心ということで、
小動物医療関連の話題を中心に解説していきたいと思います。

また、獣医学全般の話題でも皆さんに知っておいて欲しいものも取り上げます。
世界で刻々と動いている獣医学の今を肌で感じていただければ幸いです。
是非とも興味を持っていただき、継続してお読みいただけることを期待しています。

酪農学園大学名誉教授 田村 豊

はじめに

2月24日に突如開始されたロシアのプーチン大統領が主導するウクライナ侵略戦争は、多くのウクライナ民間人を殺戮するとともに市民の家屋や多くの歴史的建造物を無差別に破壊し、国土を焼土と化しています。当初は短期決戦を目論んだものの、ウクライナ国民の強い愛国心による防衛や西側諸国のさまざまな援助により、戦争は終結せず長期化も囁かれています。

戦況の悪化に業を煮やしたプーチン大統領は、状況を好転させるために禁じ手である核兵器や生物・化学兵器を使用する可能性についても報道もなされています。まさに狂気の沙汰で、今のプーチン大統領にはナチスドイツのヒットラーのように理性のひとかけらもないようです。話題となっている生物兵器には人獣共通感染症の病原体を使う可能性が高く、獣医学とも深く関連します。そこで今回は生物兵器と獣医学との深いかかわりについて、歴史を振り返る中で、獣医師として知っておくべき情報をまとめたいと思います。