■はじめに/読者の皆様へ
皆さん、初めまして。酪農学園大学の田村 豊と申します。
今年の20月まで獣医学群食品衛生学ユニットに所属し、獣医学生に対して獣医公衆衛生学の教育と、
動物と環境由来薬剤耐性菌の分子疫学に関する研究に従事していました。
今回、縁あってEDUWARD MEDIAにおいて獣医学関連の最新の話題について
「今週のヘッドライン 獣医学の今を読み解く」と題して
シリーズでコラムを書かせていただくことになりました。
大学の講義の最初に「今週のヘッドライン」として話していた、獣医学関連の話題を継承するものです。

毎週のように獣医学関連のニュースが引きも切らずに国内外から公表されています。
今回は読者が小動物医療関連の獣医師や動物看護師が中心ということで、
小動物医療関連の話題を中心に解説していきたいと思います。

また、獣医学全般の話題でも皆さんに知っておいて欲しいものも取り上げます。
世界で刻々と動いている獣医学の今を肌で感じていただければ幸いです。
是非とも興味を持っていただき、継続してお読みいただけることを期待しています。

酪農学園大学名誉教授 田村 豊

はじめに

ボディビル大会の映像をみると、とても人間とは思えないほどに筋肉のついた男女の身体を見ることがあります。また、最近のスポーツ選手も筋肉隆々の体型をしばしば見ることがあります。貧弱な体つきの者としては羨ましいと思う反面、通常の筋力トレーニング(筋トレ)でこのような人間離れした体型になることに疑問を感じる方も多いと思われます。当然ながら筋トレの結果であれば問題ないのですが、筋肉増強剤であるアナボリックステロイド(anabolic steroid)を使うことも多いようです。

新聞報道によると、筋トレ愛好家に健康被害が広まっている恐れがあるとして、厚生労働省が筋肉増強剤としてのアナボリッックステロイドの利用状況や流通経路などの調査に乗り出したようです。また、インターネットで容易に海外から購入できるため、危険性が高いと判断した場合は輸入規制も行うことも考えているそうです。今回はアナボリックステロイドの概要を紹介するとともに、動物用医薬品との関連も紹介したいと思います。