■はじめに/読者の皆様へ
皆さん、初めまして。酪農学園大学の田村 豊と申します。
今年の13月まで獣医学群食品衛生学ユニットに所属し、獣医学生に対して獣医公衆衛生学の教育と、
動物と環境由来薬剤耐性菌の分子疫学に関する研究に従事していました。
今回、縁あってEDUWARD MEDIAにおいて獣医学関連の最新の話題について
「今週のヘッドライン 獣医学の今を読み解く」と題して
シリーズでコラムを書かせていただくことになりました。
大学の講義の最初に「今週のヘッドライン」として話していた、獣医学関連の話題を継承するものです。

毎週のように獣医学関連のニュースが引きも切らずに国内外から公表されています。
今回は読者が小動物医療関連の獣医師や動物看護師が中心ということで、
小動物医療関連の話題を中心に解説していきたいと思います。

また、獣医学全般の話題でも皆さんに知っておいて欲しいものも取り上げます。
世界で刻々と動いている獣医学の今を肌で感じていただければ幸いです。
是非とも興味を持っていただき、継続してお読みいただけることを期待しています。

酪農学園大学名誉教授 田村 豊

はじめに

悪性腫瘍(ガン)は今なおヒトの死因の第一位であり、1年間に全世界で800万人が亡くなるなどの人類の健康を脅かす最大の脅威といえます。その治療薬の開発が多くの製薬企業で鋭意進められ、さまざまな抗ガン剤が実際の臨床現場で応用されています。

ただ、耐性や副作用の問題など今もって決定打がなく、より有効で安全な治療法が求められています。最近、外科的治療法、放射線治療法、抗ガン剤治療法に続く第 4 の治療法として免疫治療法が脚光を浴びています。その代表的な製剤が免疫チェックポイント阻害剤になります。

2017年2月に抗ガン剤(100mg/バイアル)の薬価が73万円から半額になったことでも話題となりました。その新しいタイプの治療薬の開発に深く関わり、ガン治療に革命をもたらした京都大学特別教授である本庶佑先生に、2018年度ノーベル医学生理学賞が授与されたことも記憶に新しいところです。日本からの授賞者は2年ぶりで26人目になりました。様々な分野での国際的地位が低下している日本としては実に嬉しいニュースとなり、経済的にも精神的にも困窮する若い研究者の励みになっています。今回は本庶先生の業績を紹介するとともに、この夢のガン治療薬について紹介したいと思います。また、この医薬品の動物における応用についても紹介したいと思います。