■はじめに/読者の皆様へ
皆さん、初めまして。酪農学園大学の田村 豊と申します。
今年の12月まで獣医学群食品衛生学ユニットに所属し、獣医学生に対して獣医公衆衛生学の教育と、
動物と環境由来薬剤耐性菌の分子疫学に関する研究に従事していました。
今回、縁あってEDUWARD MEDIAにおいて獣医学関連の最新の話題について
「今週のヘッドライン 獣医学の今を読み解く」と題して
シリーズでコラムを書かせていただくことになりました。
大学の講義の最初に「今週のヘッドライン」として話していた、獣医学関連の話題を継承するものです。

毎週のように獣医学関連のニュースが引きも切らずに国内外から公表されています。
今回は読者が小動物医療関連の獣医師や動物看護師が中心ということで、
小動物医療関連の話題を中心に解説していきたいと思います。

また、獣医学全般の話題でも皆さんに知っておいて欲しいものも取り上げます。
世界で刻々と動いている獣医学の今を肌で感じていただければ幸いです。
是非とも興味を持っていただき、継続してお読みいただけることを期待しています。

酪農学園大学名誉教授 田村 豊

はじめに

1999年から農林水産省により家畜の薬剤耐性モニタリング体制(対外的にJVARMと呼ばれています)が確立され、家畜由来大腸菌や腸球菌、それに病原細菌の薬剤耐性に関する経時的なデータが公表されています¹⁾。これにより医療分野に対抗する経時的な動物由来耐性菌に対する全国的な調査体制が整備され、毎年、薬剤耐性モニタリング成績が英語や日本語で公表されています。

JVARMが開始されて20年を超え、各種データが蓄積されてきたことから国内外で高い評価を受けているところです。しかし、獣医師の治療対象である犬や猫などの伴侶動物に関する調査体制は世界的にもごくわずかしか確立されておらず、残念ながらJVARMも対象としていませんでした。ところが、2016年に公表されたわが国の薬剤耐性対策アクションプランの一環として、2017年度から伴侶(愛玩)動物も調査対象に加えられ、世界的に最も進んだ動物の薬剤耐性モニタリング体制が稼働しています²⁾。そこで、今回はJVARMのデータから犬や猫由来大腸菌の薬剤耐性状況を紹介したいと思います。