■はじめに/読者の皆様へ
皆さん、初めまして。酪農学園大学の田村 豊と申します。
今年の5月まで獣医学群食品衛生学ユニットに所属し、獣医学生に対して獣医公衆衛生学の教育と、
動物と環境由来薬剤耐性菌の分子疫学に関する研究に従事していました。
今回、縁あってEDUWARD MEDIAにおいて獣医学関連の最新の話題について
「今週のヘッドライン 獣医学の今を読み解く」と題して
シリーズでコラムを書かせていただくことになりました。
大学の講義の最初に「今週のヘッドライン」として話していた、獣医学関連の話題を継承するものです。

毎週のように獣医学関連のニュースが引きも切らずに国内外から公表されています。
今回は読者が小動物医療関連の獣医師や動物看護師が中心ということで、
小動物医療関連の話題を中心に解説していきたいと思います。

また、獣医学全般の話題でも皆さんに知っておいて欲しいものも取り上げます。
世界で刻々と動いている獣医学の今を肌で感じていただければ幸いです。
是非とも興味を持っていただき、継続してお読みいただけることを期待しています。

酪農学園大学名誉教授 田村 豊

はじめに

アレルギーとは、ダニや花粉などのアレルゲンによる免疫反応に基づく生体に対する全身的または局所的な障害をいいます。代表的な障害として、アナフィラキシーショック、アレルギー性鼻炎、結膜炎、気管支喘息、蕁麻疹などがあります。2011年のリウマチ・アレルギー対策委員会報告書によれば、わが国の全人口の約2人に1人が何らかのアレルギー疾患に罹患しており、急速に増加していると結論づけています。まさに国民病と呼ぶのにふさわしい疾患となっているのです。

一方、最近の複雑化した社会を生き抜くには、犬や猫などの伴侶動物に癒しを求めて、一緒に生活する機会が増しています。ペットフード協会の2018年度の調査によれば、犬の飼育率は 12.6%で猫は 9.8%と、非常に多くの世帯で伴侶動物が飼育されているとされています。また、最近の傾向として散歩や外出時以外を含めて室内飼育が一般的で、犬では86%、猫では89%が主に室内で飼育されていると報告されています。したがって、人間と最も近いところに犬や猫がいることになります。

同時に正確な日本での疫学調査はありませんが、犬や猫に由来するアレルゲンによる動物アレルギーに悩まされている飼い主が少なからずいることも知られており、その対策が求められているのです。私自身、獣医学生から動物アレルギーであることから獣医師として仕事ができるのかとの悩みを打ち明けられたことが複数回経験しています。そこで今回は、イヌ・ネコアレルギーに関する情報を提供するともに、飼い主であるアレルギー患者のための猫に接種するネコアレルギー対策用ワクチンの開発状況について紹介したいと思います。