今回は、前回お話した蔵象論の中から、順番に「肝」「心」をご説明していきます!私たちが普段使っている「肝臓」「心臓」というイメージから頭を少し離して、新しい見方をしてみましょう!

感情にも関わる「肝」

一般的には、「肝臓」の働きと言えば栄養素の合成や保存、解毒、胆汁の生成と分泌などですが、中医学の「肝」は、少し違う働きをもつものと捉えられます。
「肝」の主な働きは
① 「蔵血(ぞうけつ)」:血を貯める働きと、血脈を通して血液量を調整する働き
② 「疏泄(そせつ)」:体内を流れる血や気が、滞りなく円滑に流れるイメージをしていただくと良いと思いますが、気血だけでなく、消化機能を担当する「脾・胃」の働きを調節したり、情志といって、感情のコントロールも担当します。
肝臓が感情を・・・?!と少し不思議な感じがしますが、慣れてくると納得する場面が多いですよ。
前回も出てきた、図を見てみましょう。


「肝」は「木」のグループに属し、そのグループには「筋」「目」などが含まれます。その他にも、「爪」「涙」なども「肝」に関係するものなのですが、これは、「肝」の状態がそれぞれ筋(筋肉や靭帯)や目、爪や涙に表れますよ、ということなのです。
例えば、上記(もしくは前述)①の「蔵血」の作用が滞り、「肝血の不足」が起こると、筋力の低下やしびれ、ドライアイや爪の変形が起こったりします。夜、十分な睡眠がとれないと、夜の間に本来「肝」に還る「血」が不足してくるので、睡眠不足で過労気味の先生方も、手が震えたり、目がかすんだりするということがありませんか?!例えば老齢の動物でも、寝ていられる時間が短くなると、手肢が震えるといった症状や、角膜潰瘍なども起こりやすくなりますね。他の臓が関係していることもありますが、このように「筋」や「目」の状態に「肝」は深く関わっているのです。


さらに、上記(もしくは前述)②の「疏泄」の作用が失調すると、精神にも影響が出てきます。「肝」に深く関わる感情は「怒」ですが、カーッとなる怒りや興奮と、悶々とするような怒りや抑うつ状態は、それぞれ肝の気を上昇させたり、滞らせたりするので、それによる症状が出てきます。肝気が上がり過ぎると眩暈(めまい)や目の充血、イライラして怒りっぽくなるなどの症状が出ますし、肝気が滞ると「脾・胃」にも影響が出て食欲がなくなったり、下痢や嘔吐などの症状にもつながります。人でも動物でもストレスを受けると、お腹の調子が悪くなることがありますね。ペットホテルに泊まると必ず下痢をする動物などは、この「肝気鬱結」状態にあると言えるでしょう。
そういう時は、「酸」=酸っぱい味のものを食べると肝を養うことができますが、食べ過ぎは逆に肝を傷めます。何事も偏りのない「中庸」が大事です。