今回は、中医学を実践していくために重要な、「陰陽(いんよう)論」のお話をさせていただきます!このあたりから、ますます中医学らしい?!お話になってきますが、効果的な治療のためには基礎が何より大切です。ぜひめげずに読んでみてくださいね!

陰陽論とは

陰陽論は、中医学の土台となる考え方のひとつです。
これは一言でいうと、宇宙のすべての物事は「陰」のグループと「陽」のグループに分けられますよという考え方です。


この「太極図」(陰陽魚と言ったりもします)は見たことがあるでしょうか?
一つの円の中で白い魚と黒い魚がせめぎ合っているようにも助け合っているようにも見えますね。
黒い部分が陰、白い部分が陽を表しますが、これは、陰と陽という相反する性質のものが制御し合い、それぞれの量は常に変化していますが、どちらかがなくなることはなく、お互いが必要な存在なんですよ、ということを示しています。

白い部分の中にも黒い丸があり、黒い部分の中にも白い丸がありますね。
これは陰の中にも陽があり、陽の中にも陰があるということを表しています。

具体的にみていきましょう。
自然界では、例えば「地」が陰に対して「天」が陽、「水」が陰で「火」が陽、「冬」が陰で「夏」が陽・・・という風に、細かく分けられます。
冬至と過ぎると少しずつ日が長くなるのを想像してみましょう。陰が極まると、相対する陽に変わって、陽が少しずつ強くなっていきますね。


そして、第二回でもお話した通り、生命体は外界(大宇宙)に対する「小宇宙」ですから、生命体自身も陰陽に分けられます。


例えば「(からだの)内側」が陰で「体表」が陽、「五臓(ごぞう)」が陰で「六腑(ろっぷ)」が陽、など・・・
そしてこの陰と陽のバランスが取れている状態が「中庸(ちゅうよう)」と言って、生体としては「健康」な状態を意味するです。

ここまでお話すると、「陰」は静かで、抑制的で、暗かったり冷たかったりするイメージ、「陽」は活動的で、亢進し、明るく温かいイメージだということがなんとなくわかると思います。
ですが、どんなに明るくて活発な動物や人でも、休息をとらずに動き過ぎれば具合が悪くなりますし、陽が旺盛であれば良い、というわけではないのです。

例えば漢方薬に関しても、副作用がないと誤解されることがありますが、単体あるいは複数の生薬が合わさった薬です。陰陽のバランスに注意しないと、逆効果ということがあるのです。
例えば、同じ「下痢」という症状でも、からだの中の「熱」が旺盛になっていて現れる症状の一つとしての下痢もあれば、「寒(冷え)」が原因で起こるものがあります。

西洋医学的には、下痢なら下痢止めを処方されると思いますが、漢方薬はからだを温めるタイプのものや、熱を冷ますタイプのもの、気をよく巡らすものなど、それぞれグループごとに特色があります。

もし、からだが冷えている状態の下痢に、更にからだの熱をとる漢方を与えたら、どうなるでしょうか。からだの中はもっと寒くなって、症状は悪化するかもしれません。その逆も然りです。
そのため、他にどんな症状があるかや、脉(みゃく)や舌の状態の観察から、からだの陰と陽のバランスをみる、「弁証」という中医学的診断が重要になってくるのですが、詳しいお話は次回以降をお楽しみに!


実際の治療のお話を少ししましょう。これは治療の一歩手前のお話ですが、
例えば腰が痛そうだからと、いきなり患部に鍼を刺すということはありません。

バランスをみるという点では、まず、部屋に入っていらっしゃる患者さんの第一印象も大切にしています。
顔色は・・・わかりづらいかもしれませんが、目つきはどうか、気が立っているかなども有益な情報になります。
それから脉を診たりからだに触れるときも、「気」をつかいます。「これから鍼やお灸をしますよ。よろしくね」という気持ちを忘れないようにします。これは、何年も通ってくださっている患者さんにも、同じことをしています。

局所も診るが、全体も診る。
理論に基づいた治療をするが、頭でっかちにはなり過ぎない。
すべてのことは「中庸」につながっていますね。
中医学は、精神を含めたひとつの統一体という患者さんを診る、大変奥が深い医学です。


さて次回は、中医学で大切な理論のひとつ、五行論について、お話していきたいと思います!それでは皆様、お元気でお過ごしください!


青木志織 Shiori Aoki

ウィルどうぶつクリニック

大学在学時より中医学を志す
日本獣医中医薬学院卒業
1 級獣医中医師/獣医推拿整体師
現在、中医学気功も勉強中

こちらの記事もおすすめ