“とりあえずCT・MRI”をやめるには?

―藤原先生が呼吸器疾患に苦手意識をもっていたとは意外です。
 やはり、呼吸器疾患は診断までのステップがとても難しいと思います。また不定愁訴も多く、呼吸器のどの部位に問題があるかを調べている間に、症例が亡くなってしまうこともあります。そのような理由から、苦手意識をもっている先生が多いのではないでしょうか。

 昨年、あるセミナーのために、私がこれまで診てきた呼吸器の疾患について、X線検査による診断とCT検査による診断がどのくらい一致するかを調べてみました。その結果、X線検査に臨床徴候や治療反応などを併せた総合診断は、その9割がCT検査による診断と一致していることがわかりました。つまり、病気への知識をきちんと身につけてX線画像を十分に読影できれば、CT検査を行わなくとも呼吸器疾患への対応が十分可能になるということです。無麻酔CTならまだしも、CT検査のために呼吸が悪いコに麻酔をかけたくないですよね。お金の制約でCT検査ができない場合もあります。 また、呼吸器疾患には画像所見に大きな異常を認めずに、診断のために内視鏡検査や透視X線検査が必要となる場合もあります。「CT撮影ができないからわからない」ではなく、獣医師側の知識や技術をレベルアップすることで、ご家族により多くの指針を示してあげることもできます。「なるべく動物にもご家族にも負担をかけない診断・治療」が私のモットーとなっていますね。


―若手の先生にアドバイスをお願いします
 私はまだ自称若手なので、偉そうなことを言える立場ではないのですが…、どのような分野でも「目標像に向かってどう努力するか」という考えは、絶対に必要なのだと思います。そうすれば、そこに到達するための過程で技術も磨けます。私は「臨床と研究の両方できる職業」を目指し、現在の「侵襲の少ない検査を用いた呼吸器疾患や画像診断」に出会いました。目標を高く設定することで、自分を応援してくれる人や刺激的な環境と出会えるはずです。
 あとは、個人的には臨床の研究者を目指す女性が増えてくれると嬉しいです。獣医師という職業は体力が必要なため大変な側面が多いですが、やりがいは十二分にある仕事です。


―ちなみに、藤原先生のロールモデルはどなたになりますか?
 女性像としては、鷲巣月美先生です。臨床家であり研究者であり、そして母でもあった。2年間でしたが、大学でご一緒させていただき可愛がってもらいました。お亡くなりになったのは残念ですが、今もとても尊敬しています。
 研究者像であれば、長谷川大輔先生ですね。いつも研究活動に積極的で、コンスタントに論文を出して学会でも発表されています。私も必ず学会発表は毎年行うように心掛けています。「目指せ! 女性版・長谷川大輔」です(笑)。


藤原 亜紀

2009年 日本獣医生命科学大学卒業
2013年 東京大学大学院農学生命科学研究科 博士課程修了(獣医内科学教室) 、博士(獣医学)取得
2013年 日本獣医生命科学大学臨床獣医学部門治療学分野I(獣医放射線学教室) 助教
2016年 日本獣医生命科学大学臨床獣医学部門治療学分野I(獣医放射線学教室) 講師

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