わからないことを流すクセをつけたら、そこで進歩は止まる

―若手の先生や学生にアドバイスはありますか?
 「治せない」「どうなるかわからない」「飼い主に不安な思いをさせる」といった要素は、臨床獣医師が落ち込む原因になります。逆に、それらを解消できるスキルを磨くことは、獣医師にとってのやり甲斐につながるのだと思います。

 私は、研修医の頃からの習慣で一次診療時代もずっと、その日の診療で「もう少しなんとかできなかったか? 時間がなくてとりあえず先輩に聞いて方針を決めたけど、本当にそれがベストなのか?」と感じた場合、どんなに疲れていても、関連する雑誌や成書を読み比べ、時には同僚や先輩、専門家と相談し、必ず次回の診療やインフォームドへと活かせるよう、カルテに今後の方針をまとめるようにしてきました。明日にまわすと結局やらないんです。わからないことを流すクセをつけたら、そこで進歩は止まります。動物の状況をできるだけ正確に把握し飼い主に説明することは、臨床獣医師にとって手を抜いてはいけないプロの仕事だと思っています。

 また、学生の方には「あなたは偉い先生の手伝いのため、学校に行っているわけではない。自分で考え、答えを出す方法を身につけるための勉強をするんだ」ということを伝えたいです。トップダウンの指示で、何もわからないまま動いていても意味がありません。私は学生時代から、先生の話を聞いていても「本当にそれが答えなのか?」という気持ちをずっと持っていました。また、わからないことをそのままにすることは、一番やってはいけないことです。疑問点があれば、臆せずその場で聞いて解決してください。質問を怖がらず、質問できない自分を怖がってください。そして、“結果を見るのではなくやり方を学ぶ”ことを、いつも大事にして欲しいです。


大隅 尊史

2008年 日本大学生物資源科学部獣医学科卒業
2008年 東京大学附属動物医療センター 内科系研修医
2010年 ピジョン動物愛護病院勤務
2012年 東京農工大学動物医療センター 皮膚科単科研修医兼任
2013年 ウィスコンシン大学動物医療センター皮膚科 visiting resident
2014年 東京農工大学動物医療センター 皮膚科レジデント (アジア獣医皮膚科専門医協会レジデント課程)
2017年 アジア獣医皮膚科専門医協会レジデント課程修了   
    岐阜大学連合獣医学研究科博士課程入学
      東京農工大学動物医療センター 皮膚科シニアレジデント
株式会社VDT非常勤皮膚科医

※肩書きなどは、インタビュー実施当時(2017年10月)のものです。

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