物事の本質をつかむ思考のトレーニングが大事

―最後に、若い先生方にアドバイスすることはありますか
  「安易に人にものを尋ねるな、まずは自分で考えろ」ということですね。これは、聞くことを否定しているのではなく、思考のプロセスが大事ということです。
 「こんな症例があるんですが、先生どう思います?」という人は、その症例と奇跡的に全く同じ症状で、全く同じ検査所見の症例しか救えないんじゃないかと思います。「僕はこう思うんですが、先生はどう思いますか?」と思考した結果の質問をする人は応用が利き、後の似たような症例たちを幅広く救うことができる、そう感じています。

 答えを勉強するのではなく、答えにたどり着くためのプロセスを学んでほしい。自分で文献を調べるときも、ただ教科書や雑誌に書いてある表面的なことを覚えるのではなく、一歩踏み込んで参考文献をあたり、その裏付けをとる。こうして、物事の本質をつかむ思考のトレーニングが大事だと考えています。
 また、学生の方には『1つ人より秀でたものを持ちなさい』と伝えたいです。今の教育環境の中で、卒後すぐに即戦力として動物病院で活躍する事はなかなか難しい事だと思いますが、例えば、エコーというのは正常例での経験が大きな意味をもつ検査であり、学生時代からでも多くの経験を持つことができ、場合によっては勤め先の院長先生よりも初日から上手にできる、なんてことも不可能ではありません。

 人よりも秀でたものを持つことで、人の見る目は大きく変わります。その結果、その他の事もうまく回るようになるかもしれません。
 もちろんエコーで無くても良いのですが、知識や考え方だけでなく、あわせてスキルも身につけるという事も心がけて学生生活を過ごして欲しいと思っています。


中村 健介

2005年 北海道大学 獣医学部卒業
2005年 酪農学園大学附属動物病院 内科研修医
2007年 北海道大学大学院 獣医学研究科 博士課程入学
2011年 北海道大学大学院 博士研究員(日本学術振興会特別研究員PD)
2011年 北海道大学大学院 獣医学研究科 附属動物病院 助教
2017年 宮崎大学 テニュアトラック推進機構(獣医内科学分野) テニュアトラック 准教授
※肩書きなどは、インタビュー実施当時(2017年9月)のものです。

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