各分野のトップランナーが、どのように学んできたのか。
そして、どのように学びを臨床に活かしているのか。

「明日の獣医療を創る」は、すべての臨床獣医師に捧げるインタビューシリーズ。
第12回は城下 幸仁先生です。

※本インタビュー記事は、過去に取材した記事を再編集したものです。

呼吸困難の動物を救いたい

-城下先生が獣医療の中でも呼吸器を専門にされるようになったきっかけは何だったのでしょうか?

城下先生: 大学卒業後すぐに父が経営していた動物病院に入り、そこで多く遭遇したのが呼吸困難の動物でした。24時間診療制だったこともあり、救急としての来院が多かったです。当時、なかなか対応できない症例ばかりで「呼吸器について知っておかないと仕事にならないな」と思うようになったのがきっかけです。そこで呼吸器の勉強を始めたのですが、獣医療ではまだ呼吸器という分野の体系が整っておらず、ヒト医療の本なども読んでみると、呼吸器を診断するツールとして必ず血液ガスが出てくることに気づきました。その頃、仕事をしながら母校である東京農工大学の家畜外科学研究室の研究生として籍を置いていた私は、山根義久先生の勧めもあって血液ガスの研究をするようになり、やがて岐阜大学の大学院連合獣医学研究科で博士課程の学位を取得しました。


この博士課程の4年間で、心血を注いで血液ガスを使った呼吸器診断の体系化を進め、その後、現場の診断にも治療にも役立つ気管支鏡について勉強を始めました。血液ガスと気管支鏡、この二つが揃えば、これまで獣医師の感覚に頼っていた呼吸器の診断・治療は飛躍的にステップアップできるからです。しかし、ヒトの学会に足を運んだりして勉強を進めれば進めるほど、「これは日常の診療の片手間にやっていてはダメだ。呼吸器に専念しないと」と思うようになりました。そして「獣医療における呼吸器学」は20年後30年後に絶対に必要になる分野だ、という信念とビジョンもありました。そこで、この新たな道を作り上げるために、ほかのことはすべて捨ててこの道に専念しよう、と決断したのです。