これからの獣医療はどうなっていくのか。
そして、獣医師は今後どのように学んでいくべきか。
インタビューシリーズ「獣医療のミライ」では、
各分野で活躍する新進気鋭のスペシャリストたちに、
研究や臨床から得た経験をもとにした
未来へのビジョンや見解を語っていただきます。
第9回はTRVA夜間救急動物医療センターの塗木貴臣先生です。
小動物臨床と学びの魅力に気付く
―先生が獣医師を目指されたきっかけを教えてください。
父が競走馬の獣医師だったので、「動物を治す」という仕事が身近な環境で育った影響が、一番大きいと思います。子供の頃から自然と、将来の職業の選択肢の中に入っていた感じでしょうか。実家では犬をずっと飼っていたので動物に親しみもありましたし、父の姿をみて育つことで、「獣医師になれたらいいな」と漠然と考えるようになっていました。
―お父様の後を継いで、大動物をみる獣医師になろうとお考えにならなかったのでしょうか?
大学時代は父の後を継ぐだろうなという思いがあり、大動物実習を選びました。しかし、学生時代は勉強があまり好きなタイプではなくて(笑)。バスケットボールと軽音のサークル活動、アルバイトに夢中でした。同級生の助けもあって大学の試験はクリアできていたものの、実は、獣医師国家試験に落ちてしまったんです。それで、「再受験まで1年間、何も予定がなくなってしまう。どうしよう?」と困りまして……。国試の結果発表の翌日、同級生に藤田道郎先生を紹介してもらい、「動物医療センターで診療のお手伝いをさせてください」とお願いに行きました。
―その経験から、小動物臨床の道に目覚めたというわけですね。
はい。大学の授業では文字として学んだ内容が、実際の動物で起こっているというところが、すごく頭に入りやすく感じました。しかも、症例ごとに病状が違いますから、教科書通りにはいかない。そこが面白く思え、出会った症例の疾患について基礎から徹底的に、納得するまで調べ尽くしていくうち、小動物臨床への興味を深めるようになっていきました。