これからの獣医療はどうなっていくのか。
そして、獣医師は今後どのように学んでいくべきか。

インタビューシリーズ「獣医療のミライ」では、
各分野で活躍する新進気鋭のスペシャリストたちに、
研究や臨床から得た経験をもとにした
未来へのビジョンや見解を語っていただきます。

第5回は日本大学 生物資源科学部 獣医学科 獣医病理学研究室 専任講師、米国獣医病理学専門医(解剖病理学) 博士(獣医学)の近藤広孝先生です。

探究の成果を獣医療の総合的な発展に活かす

―近藤先生が獣医療に興味をもったきっかけ、そして病理学の道を選ばれた経緯をお教えください。
 私は東京の下町で生まれ育ち、幼い頃からアヒル、亀、ハムスター、金魚、猫などさまざまな動物を飼っていました。動物に接する生活が当たり前だったのですが、その生死についても身近で、時には事故や病死などショッキングなこともあったことなどから、おのずと獣医師という職業を目指すようになったという感じがしています。大学ではまさに今所属している日本大学の獣医病理学研究室で学び、「もっと研究に没頭したい」と考えはじめました。大学院での研究活動やJICAの派遣獣医師としてのウガンダでの活動などを経て、「専門性をもっと磨きたい」との想いが高まり、米国への留学を決意したわけです。


―日本大学の獣医学科学生の所属希望アンケートでは、獣医病理学研究室が上位だそうですね。多くの学生を惹きつけ、近藤先生を没頭させた病理学の醍醐味とは?
 病理学は地味な作業が多い領域ですが、探究心をグッと刺激される部分があると感じています。例えば「この動物がなぜ亡くなってしまったのか」、「なぜ治療が上手くいかなかったのか」など、飼い主さんや臨床獣医師が感じる疑問の答え、そして動物の体内で起こった変化の過程を病理医は自分の目で、顕微鏡をのぞいて実際に確かめられます。これがすごく面白い部分だと私は感じていますし、学生にとっても非常に勉強になる部分ではないかと思います。
 
 さらにいえば、病理解剖や病理組織学検査などで得られた多くの情報を蓄積し、学会、論文、商業誌などで広く公表することが非常に重要だと思います。その積み重ねによって、一つひとつの命を次の世代につなぎ、獣医療の総合的な発展に活かしていく。それが病理学の最終的な目標だと考えています。