これからの獣医療はどうなっていくのか。
そして、獣医師は今後どのように学んでいくべきか。
インタビューシリーズ「獣医療のミライ」では、
各分野で活躍する新進気鋭のスペシャリストたちに、
研究や臨床から得た経験をもとにした
未来へのビジョンや見解を語っていただきます。
第2回は麻布大学の金井詠一先生です。
発展の余地がある、獣医療の低侵襲治療
―金井先生は、内視鏡外科やIVRという専門色が強い分野を研究されていますが、興味をもつようになったきっかけを教えてください。
私が大学院生だった頃、当時のヒト医療は腹腔鏡やIVRによる低侵襲治療が重宝されはじめた時代でした。ヒト医療の情報を得ていくうちに、「なぜ動物でも同じことができないんだろう?」という疑問を感じはじめ、「IVRで動物の病気を治せないか?」といったことや「ヒトの低侵襲医療を獣医療に活かせないか?」ということに目を向けるようになりました。
―先生は大学院を修了した後、一般臨床へと進まれていますよね。そのまま大学で研究を続けたいという想いはありませんでしたか?
当時、獣医師は動物病院で働くものだと思っていたので、大学院を修了した後は一般臨床へと進みました。大学病院では、さまざまな先生たちが診断を進められたあとに、疑われる鑑別疾患を詰めていけばよかったのですが、一般臨床では「何か元気がない、食欲がない」という広い稟告から診断を進めなければいけません。
勤務医として働いた2年間では、そういったさまざまなことを学び、何物にも代えがたい経験を積ませていただいたと思っています。
―一般臨床を経験されたあと麻布大学に戻り、腫瘍の診療に従事されているとのことですが、何かきっかけがあったのでしょうか?
大学に戻った理由は「動物でも低侵襲治療を突き詰めていきたい」という意識が強くなったからです。ただ、大学に戻ったときは「これからどうはじめていこうか・・・」という悩みをもっていました。そんなとき、信田卓男先生に師事する機会があり、「医学の発展は腫瘍と共にあるようなものだから、腫瘍の分野に進むのもいいんじゃないの?」というアドバイスをいただきました。
その後、信田先生の診療を手伝っていくうちに、徐々に腫瘍の診療や手術の道へと入っていくようになりました。今は、研究してきたIVRや内視鏡外科を診療へと活かすための研究を続けている最中です。コストがかかってしまうなど、ヒト医療に比べると発展途上の分野ですが、その分、今後の発展の余地が大いにあると思います。