■はじめに/読者の皆様へ
皆さん、初めまして。酪農学園大学の田村 豊と申します。
今年の3月まで獣医学群食品衛生学ユニットに所属し、獣医学生に対して獣医公衆衛生学の教育と、
動物と環境由来薬剤耐性菌の分子疫学に関する研究に従事していました。
今回、縁あってEDUWARD MEDIAにおいて獣医学関連の最新の話題について
「今週のヘッドライン 獣医学の今を読み解く」と題して
シリーズでコラムを書かせていただくことになりました。
大学の講義の最初に「今週のヘッドライン」として話していた、獣医学関連の話題を継承するものです。

毎週のように獣医学関連のニュースが引きも切らずに国内外から公表されています。
今回は読者が小動物医療関連の獣医師や動物看護師が中心ということで、
小動物医療関連の話題を中心に解説していきたいと思います。

また、獣医学全般の話題でも皆さんに知っておいて欲しいものも取り上げます。
世界で刻々と動いている獣医学の今を肌で感じていただければ幸いです。
是非とも興味を持っていただき、継続してお読みいただけることを期待しています。

酪農学園大学名誉教授 田村 豊

診察せずに抗菌薬を投薬することが、禁止されているにもかかわらず…

コンピューターやスマートフォンの普及により、インターネットを通じての商品売買が花盛りです。特にコロナ禍の時代になり、人ごみの多い場所に行くことをためらう人たちが増えており、家庭で様々な商品の情報が容易に入手でき、手軽に商品を購入できることなどから、さらに拡大する勢いがあります。このような電子商取引を利用して、動物用医薬品も購入することができます。それ自体は利便性を向上させることでもあり、あながち否定するものではありません。

しかし、驚くのはいろいろな輸入代行サイトを見て、一般の方々が容易に人体用あるいは動物用の抗菌薬を購入できる状況にあることです。
世界的に医療における薬剤耐性菌の蔓延が非常に大きな問題となっており、医師や獣医師のみならず一般の方々に対しても抗菌薬の適正使用が求められている中、極めて由々しき状況にあるといえます。これまでの産官学が協力して推し進めてきた抗菌薬の適正使用の普及啓発活動を反故にする重要事案であると考えます。

そこで今回は、抗菌薬の個人輸入について考えてみたいと思います。
動物用医薬品としての抗菌薬は、病原菌に対して耐性を生じやすく、使用期間中に獣医師の特別の指導が必要とされ、要指示医薬品に指定されています。また、抗菌薬を使用する獣医師は動物を診察せずに投薬することが獣医師法で禁止されています。
感染症は一刻一刻と病状が変化しますし、抗菌薬の不適切な投与は耐性菌を生じさせる原因ともなることから、抗菌薬は専門的な知識を持っている獣医師しか使用できないのです。
このことを考えると一般の方々が自分の飼育する動物であっても自己判断で安易に個人輸入の動物用あるいは人体用の抗菌薬を使うべきでありません。