2022 年 11 月 19 日~20日、大阪市内で「第 43 回動物臨床医学会年次大会(動臨研)」が開催され、日本全国から 1561 名の参加者が集まりました。3 年ぶりのリアル開催とあって、会場内は熱気にあふれ、質疑応答も活発。対面発表ならではの盛り上がりが、水準の高い臨床報告が集結する動臨研の魅力を浮き彫りにしました。

本連載では、90 本弱もの発表があった今回の動臨研の講演のうち、EDUWARD Pressの編集者(獣医師含む)が特に注目した発表をピックアップ。その見どころをご紹介します!

パネルディスカッション:トイ犬種のパテラ、自信を持って手術するために―外科医間でのそれぞれの手技と考え方と実際―

【概要】
本阿彌宗紀先生(東京大学附属動物医療センター)、戸次辰郎先生(ネオベッツVRセンター)、森 淳和先生(ONE横浜どうぶつ整形外科センター ONE for Animalsグループ)の 3 名による講演が行われました。
この講演では、本邦での飼育頭数が最も多い犬種で、最も多く診断される整形外科疾患の一つである膝蓋骨内方脱臼(パテラ)について、以下の条件にあてはまる比較的スタンダードな症例が取り上げられました。

● トイ犬種
● 体重 5 kg未満
● 膝蓋骨内方脱臼グレード 2 または 3 に罹患

それぞれの先生が、膝蓋骨内方脱臼の処置に対する滑車形成術および脛骨粗面転移術(TTT)の手技について、三者三様の手技・考え方を詳細に解説しました。

講演の後半では、パネルディスカッションが実施されました。

【それぞれの手技】
膝蓋骨内方脱臼の整復術にはさまざまな術式があります。
各先生の手技の違いを一部紹介します。

<体位>
手術体位は、筋肉の走行や骨の位置関係を術者が最も確認しやすい位置に設定している
本阿彌先生 仰臥位、術者は動物の膝と対面するように立つ
戸次先生   仰臥位、左右の後肢にかかわらず、患者の右側に立つ(のちに足先側に移動)
森先生 横臥位で行う

<滑車形成術>
本阿彌先生 軟骨を温存し、ブロック状の骨片を取り出す
戸次先生   骨は切り取らず、近位の軟骨の連続性は保つ
森先生    骨は切り取らず、軟骨下骨を削ることでフラップを作成する

<脛骨粗面の転移量>
本阿彌先生 膝蓋骨の滑走方向と膝蓋靱帯の走行が一直線となるところまで
戸次先生   膝蓋靱帯内側縁が滑車溝の中心にくる位置まで
森先生    脛骨粗面先端と長趾伸筋腱溝の中間~やや腱溝よりの位置から、滑車溝の一番下に沿う位置まで