■はじめに/読者の皆様へ
皆さん、初めまして。酪農学園大学の田村 豊と申します。
今年の37月まで獣医学群食品衛生学ユニットに所属し、獣医学生に対して獣医公衆衛生学の教育と、
動物と環境由来薬剤耐性菌の分子疫学に関する研究に従事していました。
今回、縁あってEDUWARD MEDIAにおいて獣医学関連の最新の話題について
「今週のヘッドライン 獣医学の今を読み解く」と題して
シリーズでコラムを書かせていただくことになりました。
大学の講義の最初に「今週のヘッドライン」として話していた、獣医学関連の話題を継承するものです。

毎週のように獣医学関連のニュースが引きも切らずに国内外から公表されています。
今回は読者が小動物医療関連の獣医師や動物看護師が中心ということで、
小動物医療関連の話題を中心に解説していきたいと思います。

また、獣医学全般の話題でも皆さんに知っておいて欲しいものも取り上げます。
世界で刻々と動いている獣医学の今を肌で感じていただければ幸いです。
是非とも興味を持っていただき、継続してお読みいただけることを期待しています。

酪農学園大学名誉教授 田村 豊

はじめに

今は単剤として使う機会がほとんどないサルファ剤ですが、人類が最初に手にした細菌感染症の治療薬(抗菌薬)になります。ペニシリンなどの抗生物質の開発により、感染症治療の首座を明け渡してしまいましたが、今なお小動物医療ではスルファメトキサゾールとトリメトプリムの配合剤、いわゆるST合剤として小動物医療において重要な抗菌薬となっています。このサルファ剤の開発にあたって、薬理学的にも歴史的にも多くのエピソードがあることが知られています。しかし、残念なことに抗生物質の開発により隆盛期が短かったことから、そのほとんどは知られておりません。そこで今回は獣医療にも貢献したサルファ剤の開発にまつわる様々なエピソード¹'²⁾について紹介したいと思います。