■はじめに/読者の皆様へ
皆さん、初めまして。酪農学園大学の田村 豊と申します。
今年の32月まで獣医学群食品衛生学ユニットに所属し、獣医学生に対して獣医公衆衛生学の教育と、
動物と環境由来薬剤耐性菌の分子疫学に関する研究に従事していました。
今回、縁あってEDUWARD MEDIAにおいて獣医学関連の最新の話題について
「今週のヘッドライン 獣医学の今を読み解く」と題して
シリーズでコラムを書かせていただくことになりました。
大学の講義の最初に「今週のヘッドライン」として話していた、獣医学関連の話題を継承するものです。

毎週のように獣医学関連のニュースが引きも切らずに国内外から公表されています。
今回は読者が小動物医療関連の獣医師や動物看護師が中心ということで、
小動物医療関連の話題を中心に解説していきたいと思います。

また、獣医学全般の話題でも皆さんに知っておいて欲しいものも取り上げます。
世界で刻々と動いている獣医学の今を肌で感じていただければ幸いです。
是非とも興味を持っていただき、継続してお読みいただけることを期待しています。

酪農学園大学名誉教授 田村 豊

はじめに

読者の皆様の中には、アレルギー疾患にお悩みの方が多くいるものと思います。多くは慢性の経過をたどり、有効な治療薬の開発が十分に進んでいないために、改善や悪化を繰り返すことにより、長期間にわたり生活の質を著しく損なっていると思われます。中でも血圧低下や意識障害を伴うアナフィラキシーや一部の薬剤アレルギーなどは、突然の増悪により致死的な転機を取る場合もあり注意が必要です。

私自身について話すと大学卒業後に北海道から東京に移って40歳を過ぎてから突然に花粉症を発症し、鼻や目の症状により花粉のシーズンは非常に気の重い毎日でした。2011年の報告によれば、日本人全人口の約二人に一人が何らかのアレルギー疾患に罹患しているそうで、まさに国民病といったところです¹⁾。1999年に犬や猫などのペットを乳児期に飼育すると学童期の気管支喘息罹患率が有意に低いことが報告され、ヒトのアレルギー対策としてペットの飼育の重要性が指摘されました²⁾。このことはペットを飼育する新たな意義に繋がることから、ここでアレルギー対策としてのペットの効用について考えてみたいと思います。