■はじめに/読者の皆様へ
皆さん、初めまして。酪農学園大学の田村 豊と申します。
今年の29月まで獣医学群食品衛生学ユニットに所属し、獣医学生に対して獣医公衆衛生学の教育と、
動物と環境由来薬剤耐性菌の分子疫学に関する研究に従事していました。
今回、縁あってEDUWARD MEDIAにおいて獣医学関連の最新の話題について
「今週のヘッドライン 獣医学の今を読み解く」と題して
シリーズでコラムを書かせていただくことになりました。
大学の講義の最初に「今週のヘッドライン」として話していた、獣医学関連の話題を継承するものです。

毎週のように獣医学関連のニュースが引きも切らずに国内外から公表されています。
今回は読者が小動物医療関連の獣医師や動物看護師が中心ということで、
小動物医療関連の話題を中心に解説していきたいと思います。

また、獣医学全般の話題でも皆さんに知っておいて欲しいものも取り上げます。
世界で刻々と動いている獣医学の今を肌で感じていただければ幸いです。
是非とも興味を持っていただき、継続してお読みいただけることを期待しています。

酪農学園大学名誉教授 田村 豊

はじめに

犬や猫などの伴侶動物は、我々の身近で生活する機会が増えています。特に最近、散歩以外は室内で飼育すると答えた飼い主が 80%以上であったとのアンケート調査も公表されています。さらに同じ布団で寝るといった過度の接触も行われています。そこで気になるのが伴侶動物から飼い主へ、または飼い主から伴侶動物への病原微生物の伝播(感染)です。人獣共通感染症の原因微生物だけでなく、薬剤耐性菌が伝播する可能性も指摘されています。これまで日本で飼育される犬と飼い主の間で薬剤耐性菌が伝播することを明らかにした論文もいくつか公表されるようになりました。そこで今回は公表論文から犬と飼い主の間での薬剤耐性菌の伝播について考えてみたいと思います。