■はじめに/読者の皆様へ
皆さん、初めまして。酪農学園大学の田村 豊と申します。
今年の21月まで獣医学群食品衛生学ユニットに所属し、獣医学生に対して獣医公衆衛生学の教育と、
動物と環境由来薬剤耐性菌の分子疫学に関する研究に従事していました。
今回、縁あってEDUWARD MEDIAにおいて獣医学関連の最新の話題について
「今週のヘッドライン 獣医学の今を読み解く」と題して
シリーズでコラムを書かせていただくことになりました。
大学の講義の最初に「今週のヘッドライン」として話していた、獣医学関連の話題を継承するものです。

毎週のように獣医学関連のニュースが引きも切らずに国内外から公表されています。
今回は読者が小動物医療関連の獣医師や動物看護師が中心ということで、
小動物医療関連の話題を中心に解説していきたいと思います。

また、獣医学全般の話題でも皆さんに知っておいて欲しいものも取り上げます。
世界で刻々と動いている獣医学の今を肌で感じていただければ幸いです。
是非とも興味を持っていただき、継続してお読みいただけることを期待しています。

酪農学園大学名誉教授 田村 豊

はじめに

小動物臨床に携わる獣医師の皆様は、毎年、狂犬病予防法に則り、狂犬病ワクチン接種に取り組まれていることと思います。獣医師のこの取組みのお陰で、日本は 1958 年以来、狂犬病の無い世界でも稀有の国になっています。これも臨床獣医師の並々ならぬ努力の結晶と深く感謝しているところです。この狂犬病ワクチン接種について、しばしば有害事象(因果関係を問わず、ワクチン接種後の好ましくない事柄)が報告され、死亡例も毎年確認されていることから、臨床獣医師の中にはワクチン接種に躊躇する方が少なからずいることも聞き及んでいます。

しかし、狂犬病ワクチン接種に伴う有害事象についての科学的な疫学情報は限られており、不明な点が多く残されています。今般、麻布大学の研究グループが日本における狂犬病ワクチン接種に伴う有害事象とアナフィラキシーの発現状況についてまとめ、日本獣医学会誌に公表しています¹⁾。そこで今回はこの公表論文の概要を紹介し、狂犬病ワクチンの安全性について考えてみたいと思います。