■はじめに/読者の皆様へ
皆さん、初めまして。酪農学園大学の田村 豊と申します。
今年の18月まで獣医学群食品衛生学ユニットに所属し、獣医学生に対して獣医公衆衛生学の教育と、
動物と環境由来薬剤耐性菌の分子疫学に関する研究に従事していました。
今回、縁あってEDUWARD MEDIAにおいて獣医学関連の最新の話題について
「今週のヘッドライン 獣医学の今を読み解く」と題して
シリーズでコラムを書かせていただくことになりました。
大学の講義の最初に「今週のヘッドライン」として話していた、獣医学関連の話題を継承するものです。

毎週のように獣医学関連のニュースが引きも切らずに国内外から公表されています。
今回は読者が小動物医療関連の獣医師や動物看護師が中心ということで、
小動物医療関連の話題を中心に解説していきたいと思います。

また、獣医学全般の話題でも皆さんに知っておいて欲しいものも取り上げます。
世界で刻々と動いている獣医学の今を肌で感じていただければ幸いです。
是非とも興味を持っていただき、継続してお読みいただけることを期待しています。

酪農学園大学名誉教授 田村 豊

はじめに

アフリカのまだ文明があまり入っていない原住民に「歯磨き粉を薬だ」として与えて病気を治したと言う逸話を聞いたことがあるのではないでしょうか? この話の真偽は不明ですが、本来、薬としての効果はない錠剤や散剤などを「特別の効果をもつ薬である」と伝えて被験者に与えると、暗示的な作用が働いて、説明された通りの効果が得られることがあります。このような効果を“プラセボ効果”と呼び、その偽薬を“プラセボ(Placebo)”と呼んでいます。したがって、人体用の新薬の臨床試験では、プラセボ群に対しての効果を評価することにより、科学的に正しい薬の効果を証明することが行われているのです。そこで今回は新薬の臨床試験に係わることもあろうかと思い、プラセボ効果について解説したいと思います。