■はじめに/読者の皆様へ
皆さん、初めまして。酪農学園大学の田村 豊と申します。
今年の16月まで獣医学群食品衛生学ユニットに所属し、獣医学生に対して獣医公衆衛生学の教育と、
動物と環境由来薬剤耐性菌の分子疫学に関する研究に従事していました。
今回、縁あってEDUWARD MEDIAにおいて獣医学関連の最新の話題について
「今週のヘッドライン 獣医学の今を読み解く」と題して
シリーズでコラムを書かせていただくことになりました。
大学の講義の最初に「今週のヘッドライン」として話していた、獣医学関連の話題を継承するものです。

毎週のように獣医学関連のニュースが引きも切らずに国内外から公表されています。
今回は読者が小動物医療関連の獣医師や動物看護師が中心ということで、
小動物医療関連の話題を中心に解説していきたいと思います。

また、獣医学全般の話題でも皆さんに知っておいて欲しいものも取り上げます。
世界で刻々と動いている獣医学の今を肌で感じていただければ幸いです。
是非とも興味を持っていただき、継続してお読みいただけることを期待しています。

酪農学園大学名誉教授 田村 豊

はじめに

犬は最も古くから家畜化された動物であり、発掘遺跡によると1万2千年ほど前から人間とともに生活していたと考えられています。当初は狩猟犬として獲物を捕まえたり、防犯の目的で飼育されていたと考えられます。その後、長い歴史を経て伴侶動物として我々の最も身近な動物としての地位を確立しています。

一方で滋養強壮など栄養目的に犬肉を食べる習慣の国が少なからず存在します。特に韓国は紀元一世紀の三国時代に始まった長い犬食の歴史を持っています。この犬食文化に対して国際的に批判の矢面に立たされたのは、1988年のソウルにおける夏季オリンピックであり、2001年の国際的なサッカー大会であるFIFAワールドカップでした。近年、国際的な動向を反映して犬のと殺場が閉鎖され、地方裁判所が食肉のために犬を殺すことは違法であるとの裁定を下すなど食肉の消費が減少していました。このような状況のもと、9月27日のニュースによれば韓国の文在寅大統領が犬食文化について「禁止を慎重に検討する時期」との考えを示しました(https://news.yahoo.co.jp/articles/e1fe1b32634284212c5f15ab65cf881ab4705ad3)。そこで今回は韓国における犬食文化の歴史を紹介し、犬食文化について考えてみたいと思います。