■はじめに/読者の皆様へ
皆さん、初めまして。酪農学園大学の田村 豊と申します。
今年の14月まで獣医学群食品衛生学ユニットに所属し、獣医学生に対して獣医公衆衛生学の教育と、
動物と環境由来薬剤耐性菌の分子疫学に関する研究に従事していました。
今回、縁あってEDUWARD MEDIAにおいて獣医学関連の最新の話題について
「今週のヘッドライン 獣医学の今を読み解く」と題して
シリーズでコラムを書かせていただくことになりました。
大学の講義の最初に「今週のヘッドライン」として話していた、獣医学関連の話題を継承するものです。

毎週のように獣医学関連のニュースが引きも切らずに国内外から公表されています。
今回は読者が小動物医療関連の獣医師や動物看護師が中心ということで、
小動物医療関連の話題を中心に解説していきたいと思います。

また、獣医学全般の話題でも皆さんに知っておいて欲しいものも取り上げます。
世界で刻々と動いている獣医学の今を肌で感じていただければ幸いです。
是非とも興味を持っていただき、継続してお読みいただけることを期待しています。

酪農学園大学名誉教授 田村 豊

はじめに

ダニ媒介性感染症には、クリミア・コンゴ出血熱や、重症熱性血小板減少症(SFTS)、ダニ媒介性脳炎、ツツガムシ病、日本紅斑熱などがあり、ほとんどが人獣共通感染症です。野外活動や農作業、レジャーなどでダニの生息地に立ち入るとダニに咬まれることがあり、ダニが病原体を保有した場合、咬まれたヒトが発病するのです。また、犬や猫も飼い主と行動を共にする機会が多く、またダニが寄生しやすい動物であり、体毛が密集しているので発見が遅れることも多いものです。このコラムでもSFTSの原因ウイルスが犬や猫からヒトに感染した事例を紹介しました。

また北海道獣医師会と北海道大学大学院獣医学研究院公衆衛生学教室の共同研究で、北海道に居住する犬の1.5 %でダニ媒介脳炎ウイルスの特異抗体が検出され、付着したダニからウイルスが分離されています(http://www.hokkaido-juishikai.jp/wp/wp-content/uploads/2019/04/ffd35750077b5dba2af33711cbb6845f.pdf )。今般、北海道で新たなダニ媒介性感染症が発見されました。今のところ研究が進んでおらず、犬や猫との関連は不明です。しかし、先の事例もあることから小動物臨床に携わる獣医師であれば新たな人獣共通感染症の情報は必要と考え、ここにエゾウイルス感染症(エゾウイルス熱)の概要を紹介したいと思います。