■はじめに/読者の皆様へ
皆さん、初めまして。酪農学園大学の田村 豊と申します。
今年の11月まで獣医学群食品衛生学ユニットに所属し、獣医学生に対して獣医公衆衛生学の教育と、
動物と環境由来薬剤耐性菌の分子疫学に関する研究に従事していました。
今回、縁あってEDUWARD MEDIAにおいて獣医学関連の最新の話題について
「今週のヘッドライン 獣医学の今を読み解く」と題して
シリーズでコラムを書かせていただくことになりました。
大学の講義の最初に「今週のヘッドライン」として話していた、獣医学関連の話題を継承するものです。

毎週のように獣医学関連のニュースが引きも切らずに国内外から公表されています。
今回は読者が小動物医療関連の獣医師や動物看護師が中心ということで、
小動物医療関連の話題を中心に解説していきたいと思います。

また、獣医学全般の話題でも皆さんに知っておいて欲しいものも取り上げます。
世界で刻々と動いている獣医学の今を肌で感じていただければ幸いです。
是非とも興味を持っていただき、継続してお読みいただけることを期待しています。

酪農学園大学名誉教授 田村 豊

はじめに

今、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的に猛威を振るっており、日本でも緊急事態宣言が発出されて、その制圧のために多くの社会的隔離策が実行されています。また、個人に対しても多くの行動に対して自粛が求められています。しかし、残念なことに日本では終息が見通せず、世界中で尊い命を落とされた方が多数でています。

最近、この感染症の原因となる新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の由来について米中で論争が行われていますが、最初はコウモリを起源として直接的あるいは中間動物を介してヒトに感染したものと考えられています。その後、ヒトからヒトへと次々に感染し、今のような世界的な蔓延へと繋がっています。本来は森林や洞窟の中で生息するコウモリの間で感染を繰り返されて穏便に種を維持していたウイルスが、突如人間社会に出現して猛威を振るうようになったのです。

ではなぜコウモリが保有するウイルスがヒトに感染するようになったのでしょうか?今回は野生動物からヒトに感染する人獣共通感染症の話です。