さて、いよいよ最終回です。今回は、実際の症例をみていきます。診断学の知識はとても細かいので、また別の機会にお伝えしていけたらと思いますが、ぜひ基礎理論で出てきたことを思い出して読んでみてくださいね!

シベリアンハスキー,9歳,去勢雄

【主訴】
2か月前(4月下旬)より、散歩中に公園で突然空を見つめ口をパクパクとする発作のような症状が起こるようになり、その後は怯えたような素振りを見せ、まともに歩けなくなってしまうことが1日おき程の頻度で続くようになった。小さい頃より興奮しやすく、花火のような大きな音には敏感に反応する方だったが、今回の発作のような症状は、音なのか臭いなのか、何が原因になっているのか人間からは感知できない。抗うつ剤などの内科的治療や、神経科や行動診療科の受診も勧められたが、もし鍼灸や漢方治療の対象になるなら、試してみたい。

【既往歴】
4歳のころから、1年に1~2度(多い年は3度)てんかん様の発作が起こるようになった。だいたい、何かのイベントに一緒に参加した後や、興奮するような何かが起こった翌日に起こっていたが、今回のような症状は初めてとのこと。以前健康診断で、脊椎のどこかの間隔が狭いと言われたことがある。右上眼瞼にマイボーム腺腫あり。

【生活環境】
同居犬にハスキー犬がもう1頭いるが、関係は良好。
全身状態良好、常に食欲あり、良便。

【脉】
沈、やや細(弦脉ではない)

【舌】
やや暗い淡紅色、やや胖大、薄苔

【目】
内眼角から瞳孔に向かって細かい血管線あり

次のページから【弁証論治】という、中医学的診断と治療を行っていきます。