雑誌のすごいところ・成書のすごいところ

―雑誌・書籍にもいろいろな種類があります。とっつきやすい雑誌もあれば、掘り下げられた専門書もあり、細かいところまで網羅された、いわゆる成書もありますよね。中村先生はどういう本を使うとよいと思われますか?
 どれを選択するかは、どういう状況でどの深さまで知りたいのか、早さ、正確さなどの条件のうち、どれを優先させたいかによって変わってきます。

 忙しい一次診療の場であれば、まずスピードが求められます。この症例にどう対応するか、どういう順番でどういう処置をすればよいのかをいち早く知りたいときに、分厚い成書を開いて調べるのは容易ではありません。そういうとき、雑誌は非常に便利です。例えば、胃捻転ならこういう症状でこういう対処法があり、こういうケースもあるから気をつけて、といった流れがわかりやすく書いてあるので、端的に全体のイメージがつかめるし、写真も多いので理解しやすい。また、臨床で遭遇しやすい症例や成書に載っていない最新の事例を学びたいときには、こうした雑誌を積極的に活用しますね。

 私もそうだったのですが、臨床現場にいる獣医師は日々の診療をまわしていくだけで精一杯で、なかなか情報のインプットができないんですよ。たまの休みの日だって疲れきっているから、細かい文字でびっしり書いてある成書を開く気力はないのが現実。だから、欲しい情報がコンパクトにまとめてある雑誌や専門書は本当に貴重です。
 一方で、正確な情報をもとに、まとめたり、他人に伝えたりする場合は、成書でしっかり学ぶことも大切です。成書のすごいところは、論文を読まなくても大事なことが集約されている点です。 私は今でも成書で勉強していますが、研修医や動物看護師向けの雑誌や専門書は読みやすく、情報が吸収しやすいので、いざというときに非常に役に立ちます。


―先生がご推薦する図書に、SMALL ANIMAL CRITICAL MEDECINEがあります。推薦する理由、そして本書をどのように使って勉強されてきたのでしょうか?
 


獣医学の救急医療や集中治療についての成書であり、医学書や雑誌などで疑問に思う内容があれば、ここに立ち戻るようにしています。
洋書なので読むのに少しエネルギーがいりますが、獣医学領域における「答え」が描いてある一冊です。私は、読み込めるように単行本と移動時にも読めるように電子版、その両方をもっています。救急をやる先生にはマストの一冊ですね。


―最後に、若手獣医師たちに、メッセージをお願いします。
 よく「百聞は一見にしかず」と言いますが、まったくその通りです。救急についてどのように勉強すべきわからないという方がいたら、是非一度、私の病院に来て実際の診療を見学してみてください。もちろん、私以外にもウェルカムな獣医師の先生はたくさんいますよ。そこで診療のイメージをつかみ、アプローチの仕方などを参考にしてください。興味を抱いた点についてはもう一歩踏み込んで、雑誌・書籍をあたってみるとよいでしょう。いつでもお待ちしております。


中村 篤史

北里大学卒業
2006年 東京大学附属動物医療センター 内科研修医
2008年 酪農学園大学付属動物病院 内科研修医
2009年 高橋犬猫病院 勤務医(埼玉県岩槻区)
※肩書などは、インタビュー実施当時(2017年7月)のものです。

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